9月30日、ドバイ発テルアビブ行きflydubai便FZ1073のコックピットで、オマーン人の副操縦士がインド人機長スミット・マッチャルを刺す事件が発生した。機長は重傷を負いながらもコックピットのドアを開け、乗客と乗務員が副操縦士を制圧。機内にいた別のflydubaiパイロットが操縦を引き継ぎ、サウジアラビアのタブクに緊急着陸した。乗客174人(うちイスラエル人166人)は全員無事で、同日中に代替機でテルアビブに到着した。
インドのモディ首相はXで「キャプテン・スミット・マッチャルはヒーローだ」と称賛し、「最大の危険に直面し、重傷を負いながらも、並外れた勇気と揺るぎない決意で他人の命を守った」と述べた。イスラエルのネタニヤフ首相も「真の英雄」と評し、「刺されながらも戦い、抵抗し、コックピットのドアを開けて乗客と乗務員が攻撃者を制圧できるようにした。これにより大惨事を防いだ」とXに投稿した。米国のトランプ大統領は、ネタニヤフ首相と電話で協議した後、副操縦士について「おそらくテロリストか、あるいは狂人だろう」と述べ、乗客の活躍に驚きを示した。
事件の経緯について、イスラエル当局は副操縦士が機長を刺し、機体を墜落させようとしたと発表。機体は30秒足らずで約1万4000フィート(約4300メートル)急降下した。乗客のヤニブ・ハユン氏は、血まみれの機長がドアを開けた後、副操縦士をチョークホールドで押さえつけ、操縦桿を引き戻して機体を立て直した。同氏は「航空事故ドキュメンタリー『メイデイ』を見ていたから操縦できた」とネタニヤフ首相に語った。歯科医のショタ・ムサエフ氏は機長の止血に当たり、ヘッドホンのコードとプラスチック製結束バンドで副操縦士の手を縛った。
メディアの論調には地域差が見られる。インドメディアは、繊維工学を学び19歳で航空業界に入ったマッチャル機長の経歴を詳しく報じ、モディ首相の称賛を大きく取り上げた。イスラエルメディアは事件を「ジハード主義者のテロ未遂」と位置づけ、ネタニヤフ首相が「9月11日のような別の攻撃を防いだ」と述べたことを強調。米国メディアは、トランプ大統領の「テロリストか狂人か」という発言と、配管工のハユン氏の活躍に焦点を当てた。欧州メディアは、乗客の証言やイスラエル選挙への影響を詳述した。一方、アジアメディアは事件の経過を客観的に報じる傾向が強い。
この事件は、イスラエル国内で10月末に予定される議会選挙を前に安全保障への懸念を高めた。イスラエルはイスラエル路線を運航する全パイロットの身元確認と追加の保安検査を実施する方針だ。flydubaiは調査が続くまでイスラエル路線の運航を一時停止すると発表した。イランとの関係について、ネタニヤフ首相は「まだ何とも言えない」とし、サウジアラビアで取り調べ中の副操縦士がアラブ首長国連邦に移送され、イスラエルも調査に参加する可能性があると述べた。