ドナルド・トランプ米大統領は9月24日、中国の習近平国家主席をホワイトハウスに迎え、国賓として盛大な歓迎行事と夕食会を開催した。両首脳は約2時間に及ぶ非公開会談を行い、貿易、人工知能(AI)、台湾問題、イラン戦争など世界の二大経済大国間の懸案について協議した。しかし、華やかな儀礼とは裏腹に、具体的な突破口はほとんど見られなかったと複数メディアが報じている。
会談の最大の焦点の一つは台湾問題だった。中国の国営通信・新華社によると、習氏はトランプ氏に対し、米国が「台湾独立」に反対する「正しい立場」を維持し、台湾問題を「慎重に」処理するよう求めた。これは、米国が伝統的に採用してきた「独立を支持しない」という表現より踏み込んだものだ。一方、ホワイトハウスは会談後、台湾問題に関する独自の声明を直ちに発表しなかった。トランプ氏は5月の訪中時に140億ドル規模の対台武器売却パッケージの最終承認を保留し、これを「非常に良い交渉カード」と呼んでおり、アジアの同盟国や共和党内部からは、経済的な成果と引き換えに台湾支援を弱めるのではないかとの懸念がくすぶっている。台湾のアナリストたちは、会談後の言語表現だけでなく、武器売却の遅延や軍事協力の調整など、米国の政策に具体的な変化が生じるかどうかが重要だと指摘する。台湾の学者・翁履中氏は、トランプ氏がこれまでと異なる立場を公に示せば、台湾は「警戒を怠るべきではない」とし、島が米中交渉の「駒」に変わる可能性に言及した。また、米国の政策が転換すれば、台湾の対米信頼に「深刻な危機」が生じ得ると警告した。コメンテーターの呉静怡氏は、習氏が台湾問題を「政治的な煙幕」として使い、首脳会談の経済・貿易面での不満足な結果を覆い隠そうとしたと分析した。
AIをめぐる両首脳の見解の相違も鮮明になった。トランプ氏はAIを「スーパーインテリジェンス(超知能)」と呼び、規制を強化せず「現状のまま」にしたいと主張した。一方、習氏は、両国がAIを「善のために」開発・管理する能力と責任を有し、その発展が「常に人間の管理下にあり、人民の幸福に資する」ことを保証すべきだと述べた。この対立は、夕食会の招待客リストにも反映された。ホワイトハウスの夕食会には、イーロン・マスク氏(テスラCEO)、サム・アルトマン氏(OpenAI CEO)、ジェンセン・フアン氏(NVIDIA CEO)、ティム・クック氏(Apple CEO)、サンダー・ピチャイ氏(Alphabet CEO)、ジェフ・ベゾス氏(Amazon創業者)ら米国のテクノロジー界の重鎮が多数出席した。しかし、AI規制強化を主張するアンソロピックのCEO、ダリオ・アモデイ氏は出席しなかった。彼の欠席は、より厳格な監督を求める立場と、フアン氏らが示す楽観論との対比として、現地メディアに注目された。さらに、中国の企業幹部は夕食会に招待されなかった。中国の大手インターネット・自動車企業の多くが中国軍との関係を理由に米国の制裁リストに載っており、ホワイトハウスの公式行事への出席が難しかったためだと報じられている。
貿易面では、米財務長官スコット・ベッセント氏が、11月に失効予定だった1年間の貿易休戦協定を2カ月延長することで合意したと発表した。これは、より恒久的な合意に向けた交渉の猶予を与えるものだが、関税、中国による米国農産物の購入、レアアース供給、技術規制など、核心的な対立点の解決には至っていない。ベッセント氏は、中国が大豆2500万トンの購入義務は果たしているものの、170億ドル規模のその他の農産物購入では遅れていると指摘した。また、米国は中国のレアアース供給も不足しているとしている。
イラン戦争も議題となった。トランプ政権は、中国がテヘランに対する影響力を行使し、約7カ月続く戦争終結に向けて米国の条件を受け入れるよう促すことを期待している。これに対し、習氏は、米国とイランが夏に署名した暫定合意に復帰し、戦争終結を目指すことを支持すると述べた。この暫定合意は、ホルムズ海峡の支配をめぐって両国が再び戦闘を再開したため、6月に署名後まもなく崩壊していた。
首脳会談の華やかな演出も注目を集めた。トランプ氏は、ホワイトハウス南庭に新設したヘリポートを習氏に見せ、大統専用ヘリコプター「マリーンワン」に案内した。また、米国の国鳥である白頭鷲の彫刻を習氏に贈呈した。この彫刻は、トランプ氏と妻メラニア氏がデザインに参加したもので、「米国の自由で高揚する精神の体現」だと説明された。習氏はこれに対し、アトランタ動物園にパンダ2頭(ピンピンとフーシュアン)を贈ること、そして今後5年間で10万人の米国人青年を中国に受け入れる留学生交流プログラムを発表した。夕食会では、ニクソン元大統領と周恩来元首相が1972年に交わした「平和への乾杯」を記念して、シュラムズバーグ・ブラン・ド・ノワールのスパークリングワインで乾杯した。メニューは、米国の食材に中国の影響を微妙に加えた料理が提供された。
一方、ホワイトハウスとメディアの対立も続いた。トランプ氏がCNN、MS NOW、ポリティコの3社のホワイトハウスへのアクセスを禁止した問題で、連邦判事ティモシー・ケリー氏は、この禁止措置は「適切な手続き」を欠いているとして、アクセス回復を命じた。しかし、判決後もCNNとポリティコの記者は入場を拒否され、両社は即時聴聞会を要求した。このため、主要テレビ局はトランプ氏と習氏の演説を生中継せず、映像提供を拒否する抗議を行った。この問題は、報道の自由をめぐる大きな争点となっている。
米国議会からは、この首脳会談に対する批判の声も上がった。上院民主党は、会談が「見せかけ」に終始し、AI、貿易、重要鉱物、台湾向け武器といった実質的な問題で進展がなかったと非難した。共和党のロジャー・ウィッカー上院議員も、中国共産党との「厄介な問題」を踏まえれば、これほど豪華な歓迎は不要だったと述べた。一方、ランド・ポール上院議員は「外交は重要だ。もっと話し合い、戦争を減らそう」と歓迎した。
こうした中、米国の住宅ローン金利は30年固定で7.03%に上昇し、トランプ政権二期目で最高水準となった。イラン戦争によるエネルギー価格の高騰がインフレ懸念を招き、10年物国債利回りが2001年以来の高水準に接近したことが背景にある。中間選挙を11月に控えたトランプ氏にとって、経済情勢の悪化は逆風となる。
さらに、コスタリカのラウラ・フェルナンデス大統領は、国連総会の傍らで開かれたトランプ氏主導の「アメリカの盾」会合に出席しなかったことをめぐり、マヌエル・トバル外相を解任した。フェルナンデス氏は、自分が出席すべき会合への招待を外相が事前に通知しなかったことが「戦略的な損害」をもたらしたと非難した。
今回の首脳会談は、習氏にとって10年余りぶりのワシントン訪問であり、トランプ氏の二期目では3回目の対面会談となった。両首脳は「真に偉大な友情」を強調し、歴史的な関係を称賛したが、台湾、AI、貿易といった核心的な問題での具体的な進展は限定的だった。世界の二大超大国の関係は、依然として不安定な休戦状態にあると言える。