トランプ米大統領は国連総会での演説で、イランとの戦争をめぐり「合意を結ぶのか、それともイスラム共和国を迅速に消滅させるのか」という大きな決断を迫られていると述べた。演説では、イランが核兵器を獲得することを許さないと強調し、11月3日の中間選挙後に合意が成立するとの見方を改めて示した。一方、イラン側は米国が軍事圧力を緩和し、港湾封鎖を解除すれば、7日以内にホルムズ海峡を再開するとの提案を仲介国を通じて伝えた。
トランプ氏は国連総会での演説で「イランが再建し、かつてないほど偉大な国になるための合意が結ばれるのか。それともイスラム共和国を迅速に消滅させ、再び人々や国々を殺し、破壊する機会を与えないのか」と問いかけた。「彼らを地獄に追いやり、生存の可能性も、将来の偉大さや世代への希望も与えないのか」とも述べた。その上で「選挙直後に合意が成立すると信じている。彼らがそうしないのは理にかなわない」と語った。トランプ氏は「彼らは中間選挙で私がどうなるかを見ている。彼らが気づいていないのは、私が立候補しているわけではないということだ。私はすでにそれをやり、地滑り的な勝利を収めた」と付け加えた。
イラン側は米国との交渉再開に前向きな姿勢を見せている。イラン政府高官はロイターに対し、米国が軍事圧力を緩和し、イラン港湾への封鎖を解除すれば、7日以内にホルムズ海峡を再開できると述べた。高官は「米国は問題を外交的に解決したいと表明し、それを公式にし、その後プロセスを進めるためのタイムラインに合意する必要がある」と語った。国連総会は「米国が外交に復帰する黄金の機会」だとし、テヘランはワシントンが具体的な措置を取れば外交再開を歓迎すると述べた。イランのペゼシュキアン大統領はニューヨーク入りしたが、トランプ氏との首脳会談は予定されていない。イランの提案は9月16日に仲介国を通じて米国に伝達された。
各国メディアの報道を比較すると、事実認識の根幹は一致している。トランプ氏が国連演説でイランに「合意か消滅か」の選択を迫り、中間選挙後の合意に期待を示したこと、イランがホルムズ海峡再開を含む新たな提案を行ったことだ。しかし、強調点には差異がある。欧米メディア(英ガーディアン、シンガポールCNA)は、トランプ氏の演説を中間選挙を意識した選挙集会のような性格と位置づけ、共和党が議会支配を失う可能性や、戦争による燃料価格高騰が支持率低下を招いている点を強調した。ロイター通信はイランのホルムズ海峡再開提案と、サウジアラビアが紅海経由の輸出再開を準備しているという市場への影響を詳細に報じた。一方、ロシアのタス通信は、駐モスクワ・イラン大使カゼム・ジャラリ氏の見解を紹介し、米国の交渉姿勢に「誠意がない」と批判した。ジャラリ氏はトランプ氏の演説を「中間選挙前にエネルギー価格を下げようとする試み」だと述べ、現在交渉は行われていないと主張した。イラン革命防衛隊スポークスマンのホセイン・モヘビ氏もAFPに対し、6月の合意崩壊後に条件を「強化した」と述べ、ワシントンにはイランの要求を受け入れる「選択肢しかない」と語った。カタールのアルジャジーラは、イランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師と最高国家安全保障会議が新たなイニシアチブを承認したと報じた。
中東情勢の広がりも焦点となっている。イランと同盟するイエメンのフーシ派が紅海沿岸でサウジアラビア軍を押し戻し、バブ・エル・マンデブ海峡周辺の戦略的高地を奪取しつつある。サウジアラビアはフーシ派への対応で米国の支援を求めているが、トランプ氏はフーシ派への空爆を直前で見送ったと報じられた。フーシ派はサウジアラビアの紅海沿岸の港への海上封鎖を宣言し、東部の石油パイプラインへの攻撃も行われた。これに対しサウジアラムコは、攻撃で停止していた東西パイプラインの運転を再開し、ヤンブー港から輸出を再開できる状態にあると報じられた。湾岸諸国はホルムズ海峡の航行再開に熱心だが、イランにあまり多くの力を与えることには慎重だ。カタールはイランとアラブ湾岸諸国を共通の安全保障枠組みに組み込む提案を行っており、イランがこれを検討しているとされる。
この状況は、11月3日の中間選挙を前にしたトランプ政権にとって大きな試練となる。ロイター/イプソスの世論調査ではトランプ氏の支持率が過去最低の32%に低下し、民主党が下院で84%、上院で68%以上の確率で過半数を獲得すると予測されている。戦争による燃料価格高騰が共和党の支持を損なっており、議会では戦争を終わらせるための決議が繰り返し可決されている。トランプ氏は中間選挙の結果が自身の決断に影響を与えることを否定したが、イランは選挙結果を待ってから合意に応じる構えを見せている。両者の思惑が交錯する中、国連総会での外交の行方と、その後の交渉再開の可能性が、中東の安定と世界のエネルギー市場を左右する焦点となっている。