英人気歌手エド・シーラン(35歳)は19日、米フィラデルフィアでソロコンサートを開き、ガザの状況について「破滅的で、正当化できず、過剰だ」と述べた。先週、自身のツアーからラッパーのマックルモアがプロパレスチナ発言を理由に外されたことをめぐる論争に、初めて直接言及した場面となった。
シーランはリンカーン・フィナンシャル・フィールドでの公演冒頭、「イスラエルとパレスチナの状況について、自分がどこに立っているかを語りたい」と切り出した。その上で「2023年10月7日のイスラエルでの出来事は恐ろしく、ユダヤ人の何世紀にもわたる苦しみを増幅させた。ガザで起きていることは破滅的で、正当化できず、過剰だ。破壊の規模と、市民や子どもの命の喪失に心が引き裂かれた。ヨルダン川西岸で展開している組織的な不正義も見逃せない」と語った。
シーランは「これまで政治的なコメンテーターにならないよう努めてきた。音楽とショーを統一、つまり分断ではなく結束についてのものにしたかった。しかしこれは人道的な問題であり、もはや自分の気持ちを隠せない」と説明した。また「難しい決断を下さなければならず、過ちを犯している。本当に申し訳なく思う」と謝罪し、観客から拍手を受けた。
マックルモアは今月初め、ニュージャージー州のメットライフ・スタジアムで「フリー・パレスチナ」と叫び、抗議曲「ヒンズ・ホール」を披露した。これにスタジアム所有者らが反発し、シーランの米ツアー「ループ・ツアー」から外された。シーランはこの決定はツアープロモーターによるものだと否定しているが、批評家らは億万長者の実業家ロバート・クラフト氏らスタジアム所有者に屈したと非難した。
これに抗議して、シーランのバックバンドに加え、ビリー・アイリッシュの兄で音楽プロデューサーのフィニアス、アイルランド人歌手アーロン・ロウ、アイルランドのフォークバンド「ベオガ」、デンマークのバンド「ルーカス・グラハム」が相次いでツアーを離脱した。このためシーランはこの日、オープニングアクトなしで単独ステージに立った。
会場の外では約50人のプロパレスチナ派デモ参加者が集まり、パレスチナ国旗を振り「自由なパレスチナを」と唱えた。抗議活動の主催者のスポークスパーソン、アディ・チャトパディヤイ氏は「マックルモアのメッセージと、ガザの現状に注目を集めるためだ。ジェノサイドは今も続いている」と語った。
一方、ファンの反応は分かれた。ブラウン大学の18歳の学生ブランドン・アテケ氏は「シーランのクラフト氏らによるマックルモア封じ込めへの『共犯』だ」と述べ、コンサートを棄権して抗議に参加したと語った。しかし、別のファンは「コンサートは音楽を楽しむ場所であり、政治の場ではない」とシーランを擁護した。
パレスチナの学術・文化ボイコット運動(PACBI)はこの日、シーランのワールドツアー全体のボイコットを呼びかけた。ガザ保健省によれば、イスラエルの大規模攻撃でこれまでに7万3800人以上が死亡した。国連はこれらの数字を信頼できるとみなしている。
シーランは「会場がパフォーマンスの内容を事前に承認すること」への懸念も表明し、「世界の多くの場所で起きているが、自由な世界では決して起こるべきではない」と語った。この論争は、アーティストの政治的発言と興行主の力関係をめぐる議論を巻き起こし、エンターテインメント業界におけるガザ戦争の影響を改めて浮き彫りにした。