The Morning Star Observer

2026年09月18日 金曜日夕刊 (Evening Edition)ArchiveAbout

米国、サウジアラビアへのF-35戦闘機48機・243億ドル売却を承認

米国務省は17日、サウジアラビアへのF-35ステルス戦闘機48機と関連装備の売却を承認したと発表した。総額は243億ドルに上る。イラン戦争開始以降、王国にとって最大級の武器購入となる。議会の承認が条件となるが、国務省は議会に通知済みだ。

サウジアラビアは長年にわたりF-35の購入を望んできた。しかし、中東で唯一同機を運用するイスラエルは、王国との国交正常化の動きがある一方で、売却に懸念を示してきた。国務省は声明で「提案された売却は、国土防衛を強化し米軍との相互運用性を向上させることで、サウジアラビアの現在および将来の脅威を抑止する能力を改善する」と述べた。また「サウジアラビアの運用機数を増やし、空対空・空対地の自衛能力を強化する」とも付け加えた。

国務省は、この売却が「地域の軍事バランスを変えるものではない」とし、イスラエルが潜在的な地域の敵対国に対して軍事的優位を保つという米国の長年の政策に沿うものだと説明した。F-35の売却はこれまで、欧州のNATO同盟国やイスラエルなど、米国の最も緊密な同盟国に限られてきた。2019年には、トルコがロシア製防空システムを購入したことで技術流出が懸念され、NATO加盟国であるトルコをF-35計画から除外した経緯がある。

一方で、中国のスパイ活動への懸念も存在する。ニューヨーク・タイムズ紙は今週、米情報機関の分析官が、北京がサウジアラビアとのパートナーシップを通じてF-35技術を獲得する可能性を指摘したと報じた。下院情報委員会の民主党議員ラジャ・クリシュナムールティ氏はこの点を挙げて売却に反対を表明した。「米国の情報機関が、F-35が中国共産党の手の届くところに米軍事技術の至宝を置く可能性があると警告している時に、売却は進められるべきではない」と同氏は声明で述べた。

今回の売却は、サウジアラビアによる今年の一連の大型武器購入の最新例だ。国務省は9月初め、1万発以上の爆弾(破壊力の高い2000ポンド爆弾を含む)を50億ドルで売却することを承認した。今月は戦車用エンジン60基と関連装備を7億5000万ドルで、7月にはロケット弾を精密兵器に転換する誘導装置を19億6000万ドルで売却する契約を承認した。

サウジアラビアは2月に米国とイスラエルがイラン戦争を開始して以来、テヘラン軍による無人機とミサイル攻撃に繰り返しさらされてきた。また、イラン支援のフーシ派からも攻撃を受けている。イエメンの内戦は長年休眠状態だったが、7月にフーシ派とリヤド支援の国際承認政府との戦闘が再燃し、フーシ派はサウジアラビアの海上封鎖を宣言して紅海で同国の船舶を標的にしている。ワシントンは直接参戦していないが、米軍のタスクフォースがサウジアラビア軍への情報共有と計画支援の強化に取り組んでいると、米当局者が今週初めに述べた。

サウジアラビアの駐米大使館はこの取引を歓迎し、米国との関係の「強さと永続性」を反映するものだと述べた。両国の安全保障協力は「地域の安定に貢献し、集団防衛能力を強化し、共通の安全保障上の利益を前進させてきた」と付け加えた。サウジアラビアは現在、フーシ派との戦闘に直面しており、同派はイエメン紅海沿岸の大部分を掌握している。この売却承認は、サウジアラビアがフーシ派との紛争でより直接的な役割をワシントンに求めている時期に行われた。

アジア競技大会が名古屋で開幕、南米競技大会も盛況――スポーツイベントが世界を席巻

第20回アジア競技大会が9月19日、名古屋で開幕する。45カ国・地域から約1万5000人の選手・役員が参加し、43競技・71種目で469個の金メダルを争う。一方、南米競技大会(サンタフェ2026)は9月12日から26日まで開催中で、リオネル・メッシが選手にビデオメッセージを送るなど盛り上がりを見せている。

しかし、アジア競技大会は開幕を前に運営面での課題が浮上している。選手村を建設せず、クルーズ船やコンテナハウスを宿泊施設として使用するため、宿泊の質と量に批判が集まる。中国の体操選手、張博恒は到着後6時間待たされたと述べ、韓国は豊臣秀吉を題材にした歓迎行事に抗議した。

各国の状況も錯綜している。インドはマヌ・バケルとタジンダーパル・シン・トゥールを旗手に発表し、過去5大会連続で50個以上のメダルを獲得してきた実績を背景に、今大会でも高い期待が寄せられる。バングラデシュは女子サッカーで韓国に0-6で敗れ、女子クリケットは準決勝に進出した。マレーシアは女子クリケットでスリランカに敗退し、バドミントンでは金メダルを狙う。

パキスタンとインドの間では、アジアチャンピオンズトロフィーの開催地問題が再燃した。パキスタンはインドのモハリで開催される大会の会場変更を求めたが、ホッケーインディア事務局長のボーラ・ナート・シンは「変更はない。参加するならインドに来るべきだ」と拒否した。

愛知県はアジア競技大会で経済効果を見込むが、開催費用は当初の1000億円から3700億円に膨らんだ。県知事の大村秀章氏は、円安や資源価格の高騰が原因だと説明し、それでも経済効果は3.7兆円になると予測する。

南米競技大会では、84万1000枚のチケットが発行され、来場者は180万人を超えた。メッシは選手たちに「皆さんに大きな挨拶を送りたい。競技した人を祝福し、これからの人に幸運を祈る」と語った。

これらのスポーツイベントは、地域経済の活性化や国際交流の促進に寄与する。しかし、アジア競技大会の運営課題は、今後の大会運営の改善を迫るものとなる。

アサド政権時代のシリア刑務所長官に米国で60年の判決、拷問罪で有罪

米連邦地裁は17日、アサド政権下でダマスカスのアドラ刑務所を統括した元シリア政府高官サミール・ウスマン・アルシェイク被告(74)に対し、懲役60年の判決を言い渡した。連邦陪審は3月、拷問共謀1件と拷問3件の有罪評決を下していた。ロサンゼルスのヘルナン・ベラ連邦地裁が判決を下した。

検察側は、アルシェイク被告がアサド政権への反対を抑え込むため、囚人に身体的・精神的苦痛を与えるよう部下に命じ、時には自らも加わっていたと主張した。被告は2005年から2008年までアドラ刑務所を統括した。米司法省は、被告がシリア国外で本人が裁かれたアサド政権の元政府高官としては最高位の人物だと述べた。

被告は米国への移民当局に自身の犯行について嘘をつき、グリーンカードを不正取得し、米国市民権取得を試みた罪でも有罪となった。被告の弁護団は5年の刑を求めたが、判決は60年となった。判決を下したベラ判事は、被告の行為を「極悪非道で、想像を絶するほど残酷で、ほとんど言い表せないほど暴力的で残忍だった」と評した。

シリアでは2024年後半、反政府勢力の電撃的な攻勢によりアサド政権が崩壊し、50年以上に及ぶアサド家による統治が終結した。10年以上続いた内戦で数十万人が死亡し、世界的な難民危機を引き起こした。アサド政権崩壊後は、元アルカイダ指揮官のアハメド・アル・シャラーア氏が大統領に就任し、西側との関係改善に取り組んでいる。今回の判決は、シリア国外でアサド政権時代の人道犯罪に責任を問う動きの一環となった。

ロシア下院選挙が開幕、ウクライナ戦争下でプーチン政権の勝利が確実視される

ロシアで18日、下院(国家会議)議員選挙の投票が始まった。極東のカムチャツカ半島とチュクチ自治管区で最初に投票所が開き、3日間の投票期間がスタートした。2022年2月のウクライナ侵攻開始後、初めてとなる議会選挙であり、プーチン大統領率いる与党「統一ロシア」の勝利はほぼ確実視されている。

選挙は9月18日から20日までの3日間、全450議席を改選する。プーチン大統領はテレビ演説で投票を呼びかけ、「あなたの選択と意志は、何百万人もの人々が兵士たちを支えていることを改めて示すだろう」と述べた。ウクライナ戦争は5年目に入り、ウクライナ軍の長距離ドローン攻撃がロシア領内の奥深くまで到達、経済的圧力が増している。

投票には「統一ロシア」のほか、共産党、自由民主党(LDPR)、「公正ロシア」、「新しい人々」などプーチン政権と戦争を支持する政党のみが登録された。唯一の反戦政党「ヤブロコ」は、いったん選挙参加が認められたものの、最高裁判所の決定で8月に比例代表名簿から除外された。ヤブロコは現在、単独選挙区のみで候補者を擁立している。

中央選挙管理委員会のパムフィロワ委員長は、全投票所が正常に開設されたと述べた。ロシア外務省のザハロワ報道官は、ウクライナのドローンによる投票所への攻撃や偽情報など、投票を妨害する「挑発」がすでに起きていると指摘した。ドイツのロシア大使ネチャエフは、在外投票の環境が「正常とは程遠い」としながらも、限られた人員で対応すると述べた。

選挙はロシアが併合を主張するウクライナ東部のドネツク、ルハンシク、ヘルソン、ザポロジエ各州でも実施される。ウクライナ側はこれらの投票を「違法」としている。亡命した野党勢力は20日正午に「プーチン政権に反対する」投票を呼びかけており、戦争への不満を測る試金石となる。戦後初の新たな動員令への懸念も選挙の争点となっている。

政治 (Politics)

韓国大統領、中東への派兵を否定 ホルムズ海峡の航行保護は拡大検討

韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は18日、記者会見で、イラン戦争をめぐる中東紛争に韓国を巻き込む形での軍事資産の派遣を行わないと明言した。同時に、韓国船や原油輸送路、国民の安全を守るため、他国と同様に最小限の活動を行う必要があると強調した。

李大統領は「戦争に参加したり介入したりするような派遣はない。明確に言える」と述べ、この原則を今後も維持するとした。韓国政府はホルムズ海峡での役割拡大を検討しており、すでに中東に派遣されている清海部隊の活動強化が選択肢の一つとして挙がっている。韓国の原油輸入の約7割がホルムズ海峡を通過しており、2月28日の米イスラエルによるイラン攻撃以降、海運が深刻な影響を受けている。

米国のトランプ大統領は、イラン戦争への支援が不十分だとして韓国を批判し、今夏には両国軍の大規模合同演習を縮小した。韓国国内ではホルムズ海峡への派兵に反対世論が強い。

また李大統領は、米国との投資協定交渉について、案件の商業的合理性が主な争点となっており、受け入れが難しい要素はあるものの、両者は合意に近づいていると述べた。韓国は昨年、米国の関税を15%に引き下げる見返りとして、米製造業に3500億ドルを投資することを約束している。

さらに、トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の会談について、今後数カ月以内に実現する可能性があるとの認識を示した。ただし、多くの条件が揃う必要があるとも指摘した。

一方、李大統領は自身の任期について、憲法で認められている通り2030年に終了するとし、連続再選を目指す意向がないことを明確にした。また、ソウルを経済首都、世宗(セジョン)を政治首都と位置付ける首都機能分散策を推進する考えを示した。

こうした中、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)氏は、米国主導の合同軍事演習を「戦争のリハーサル」と非難し、核戦力の増強を続けると警告した。韓国政府は、トランプ大統領と金正恩氏の対話再開に向けた調整を続けている。

国連調査団、イラン攻撃で米軍の戦争犯罪認定とイラン政府の人道に対する罪を指摘

国連人権理事会が設置したイラン国際調査団は18日、米軍がイランで実施した2回の空爆が「無差別攻撃」に当たり戦争犯罪に該当する「合理的な根拠」があると結論づけた報告書を公表した。報告書は同時に、イラン政府による国内デモ弾圧が「人道に対する罪」に当たるとも認定している。

調査団が問題視したのは2月28日の攻撃だ。南部ミナブのシャジャレ・タイイェベ小学校にはトマホーク巡航ミサイルが直撃し、子ども約120人を含む150人以上が死亡した。調査団は、学校が軍事的に使用されていた証拠はなく、明確に識別可能な民用施設だったと指摘。米軍が標的データベースの情報更新を怠り、軍事的目標であることを確認しなかったのは単なる過失を超え、無差別攻撃に当たると判断した。同日、ラメルドのスポーツ施設と住宅街には精密誘導ミサイルが着弾し、市民22人が死亡した。これも同様に戦争犯罪と認定された。

一方、2025年12月末に始まった物価高騰を端緒とする全国規模のデモに対し、イラン政府は31州すべてで武力による弾圧を展開。少なくとも221人の子どもが死亡し、数万人が拘束された。報告書は、殺人・投獄・拷問などが市民に対する広範かつ組織的な攻撃として行われたとし、「人道に対する罪」に当たると結論づけた。3月から8月までに少なくとも29人が迅速裁判を経て処刑され、70人以上が処刑の危機に瀕しているという。

報告書は拘束力を持たないものの、国際司法の場で責任を追及するための証拠として蓄積される。米ホワイトハウスのアンナ・ケリー報道官は「人権理事会は数十年にわたり真剣味のない主張を続けてきた」と反論し、戦争犯罪を犯したのはイラン政権だけだと主張した。国防総省は調査継続中としてコメントを避けた。報告書は19日の人権理事会で47理事国に提示され、外交的対応が協議される見通しだ。

英新首相バーナム、国連総会でトランプ大統領と初対面へ ウクライナ支援と中東政策が焦点

英国のアンディ・バーナム首相は、9月22日にニューヨークの国連本部でドナルド・トランプ米大統領と初めて対面する。会談は国連総会の合間に設定され、両首脳の関係構築が主目的となる。バーナム政権は、前任のスターマー政権時代に比べ米国への依存度を下げつつあり、今回の会談は比較的穏当な環境で実施される見通しだ。

バーナム首相はトランプ大統領に対し、ウクライナへの支援強化を求める構えだ。特に、冬季を前にパトリオットミサイルの供給加速を訴える。一方、中東情勢では、英国・フランス・カナダがイスラエルに強硬姿勢を示しており、米国務長官ルビオ氏はこの動きを歓迎しているとされる。会談では具体的な成果物リストは用意されず、関係構築と主要課題の確認に留まる見込みだ。

バーナム政権は、欧州連合との関係強化や「中堅国」同士の連携を模索しており、米国一辺倒だった外交姿勢からの転換を図っている。今回の会談は、そうした新たな外交戦略の試金石となる。

トランプ大統領、国連総会でロドリゲス・ベネズエラ暫定大統領と初会談へ

米国のドナルド・トランプ大統領が、来週ニューヨークで開催される国連総会の傍らで、ベネズエラの暫定大統領デルシー・ロドリゲス氏と初めて会談する見通しであることが、米紙アクシオスの報道で明らかになった。実現すれば、米国大統領とベネズエラ指導者の会談は2015年のパナマ米州首脳会議でのオバマ氏とマドゥロ氏以来、11年ぶりとなる。

トランプ政権は今年1月にカラカスでニコラス・マドゥロ大統領を拘束・追放した後、ロドリゲス政権を支持し、2019年以来途絶えていた外交関係を回復している。両国関係の接近を示す最大の例は、8月28日に署名された石油協定で、米国がベネズエラの原油埋蔵量の5分の1以上を管理することになる。協定は25年間有効で、日産150万バレル超の生産を目標とし、石油価格65ドルを基準にベネズエラは約2093億ドルを受け取る計算だ。ホワイトハウスは、実業家アレハンドロ・ベタンクール氏が率いるノースアメリカン・ブルー・エナジー・パートナーズ(NABEP)に100年間の利権を付与した。

一方、この石油協定に対する反発も強まっている。18日にはカラカスでチャベス派や公務員ら数十人がデモを行い、「世界最悪の石油契約」や「トランプをベネズエラから追い出せ」と書かれたプラカードを掲げた。参加者は月額基本給が約130ボリバル(約0.15ドル)にとどまるとして、生活賃金の引き上げを要求した。デモはベネズエラ中央大学やプラサ・ベネズエラ周辺で行われ、パトリア・パラ・トドス(PPT)、ベネズエラ社会主義・自由党(PSL)、ベネズエラ共産党(PCV)などの組織が動員した。

トランプ大統領は国連総会での演説に加え、イラン戦争を協議するためペルシャ湾岸諸国の首脳とも会談する予定だ。アクシオスによれば、政権内にはロドリゲス氏との会談が「米国の傀儡」との印象を与えかねないとの懸念もあるが、トランプ氏自身はそうした懸念を共有していない。会談の最終決定は大統領次第で、まだ確定していない。

トランプ政権、ICE長官候補シュロイヤーの指名を撤回 上院承認なきまま約10年

ホワイトハウスは18日、移民・関税執行局(ICE)長官に指名されていたランス・シュロイヤー氏の指名を撤回したと発表した。トランプ政権の国内政策の最前線にある同機関は、これで上院承認を得た長官不在の状態がさらに続くことになる。

シュロイヤー氏は元オクラホマ州警察官で、国土安全保障長官マークウェイン・マリン氏の側近。6月にトランプ大統領が指名したが、上院国土安全保障・政府問題委員会のランド・ポール委員長(共和党)が、1月にミネアポリスで起きたICEと国境警備隊による銃撃で死亡した米国人2人に関する内部調査の情報提供を求め、公聴会を開かずにいた。

ポール委員長はAP通信に対し「候補者自体に懸念はない。民間人の死亡に関する内部調査の最新情報を求めただけだ」と述べ、いまだ回答を待っている状態だと明らかにした。

ICEは2017年以来、上院で承認された常任長官がおらず、暫定トップが交代を繰り返してきた。現在は民間刑務所運営会社の元幹部デビッド・ベンチュレラ氏が暫定長官を務める。トランプ政権は次期候補をいつ発表するか示していない。

欧州の岐路:予防接種率低下、移民危機、防衛再編、そして予算を巡る攻防

欧州は現在、複数の深刻な課題に同時に直面している。子供の予防接種率の低下、移民の海路到着減と死亡増、トランプ政権によるNATO再編の圧力、そして次期長期予算を巡る加盟国間の対立である。フォン・デア・ライエン欧州委員長は新たな世界秩序への対応を訴えるが、EU内部の結束は揺らぎ、極右政党の台頭がその隙間を縫う。

予防接種率の低下は、『ランセット・リージョナル・ヘルス・ヨーロッパ』誌に発表された研究が明らかにした。EU27カ国の1980年から2024年までのデータを分析した結果、16カ国で7つのワクチン指標のうち4つ以上で低下傾向が確認された。ドイツとスペインでは5つのワクチンで低下が見られ、特に2019年から2022年にかけて顕著だった。原因として、パンデミックによるサービス中断、誤情報、ポピュリズムの台頭が指摘される。研究者らは、絶対値では高い接種率を維持しているものの、傾向の変化を「早期警告信号」と位置づける。

移民を巡っては、国際移住機関(IOM)の報告によると、2026年の海路での欧州到着者は約6万人と、前年同期比で39%減少した。しかし、死亡・行方不明者は2,292人に増加し、地中海と大西洋ルートが「世界で最も危険な海路」とされる。7月にスペインの飛地セウタで発生した大規模移民流入は、EUの結束の欠如を露呈した。イタリアとデンマークが主導した22カ国の書簡は、スペインの移民政策を批判し、欧州委員会に国境管理の強化を求めた。

防衛面では、トランプ大統領の圧力がNATOの再編を加速させている。ルーマニアのミハイル・コガルニチャヌ空軍基地では、約2,000人の米軍の半数が昨年撤退した。しかし、イラン戦争のためのKC-135空中給油機が配備され、米軍の欧州依存は依然として大きい。フォン・デア・ライエン氏は欧州安全保障理事会の創設とカナダの準加盟を提案し、米国抜きの安全保障枠組みを模索する。

経済・財政では、デンマーク、ドイツ、オランダ、オーストリア、フィンランドの5首脳が共同論説を発表し、次期長期予算(MFF)の効率化を訴えた。欧州委員会が提案した約60%の名目増額は「非現実的」とし、数千億ユーロの削減を要求。共通借入にも慎重な姿勢を示し、財政規律を重視する。英国のジョン・ヒーリー財務相は、EUの「メイド・イン・ヨーロッパ」産業政策に英国を参加させるよう求め、ブレグジットの経済的影響を軽減したい考えだ。

一方、サプライチェーン再編の動きは台湾企業の中東欧進出を促している。シティはポーランドを戦略的拠点と位置づけ、AIインフラやドローン分野での投資を支援。ポーランドのGDP成長率はEU平均の約3倍とされ、ウクライナ復興のゲートウェイとしても期待される。

これらの課題は、欧州の将来に重大な影響を及ぼす。予防接種率の低下は疾病の再流行を招き、移民の危険な海路は継続する。防衛の再編はNATOの存続を左右し、予算を巡る対立はEUの結束を試す。欧州は岐路に立たされており、フォン・デア・ライエン氏の提案が実効性を持つかが問われている。

ブラジル最高裁の混乱がルラ再選戦略を直撃、スペインはセウタ移民危機で法改正へ、インド選管は37万件超の異議申し立てを最高裁に報告

ブラジルでは、最高裁判所の政治化と判事間の公開争いがルラ大統領の再選キャンペーンに打撃を与えている。外交筋は『クラリン』紙に対し、汚職告発の応酬が有権者にシステム全体への否定的な認識を生み、選挙戦を汚染していると認めた。ルラ大統領自身は裁判所の行動を『恐怖のスペクタクル』と激しく非難し、政権に近いアレシャンドレ・デ・モライス判事の調査を期待したが、実現しなかった。世論調査は予測不能な選挙戦を示しており、CNT/MDA調査ではルラ氏が47.3%対40%でリードする一方、クアエスト調査ではフラヴィオ・ボルソナーロ氏が2ポイント差で逆転するとの結果が出ている。ルラ氏はボルソナーロ一族を『祖国への裏切り者』と呼び、米国でのロビー活動を非難した。

スペインでは、社会労働党(PSOE)が最高裁が指摘した『法的空白』を埋めるため、泳いで入国する移民の国境送還に関する法律改正を検討している。最高裁は7月8日、国境での即時送還条項は物理的な障壁(フェンスなど)を越えようとする者にのみ適用されるとの判決を下した。これを受け、セウタでは7万人から8万人が流入し、一時的に500メートルのブイが設置された。PSOEのビセンテ・モンタベス議員は『最高裁が開いた法的空白は法律改正によってのみ埋まる』と述べ、国民党(PP)に協力を求めた。PPは7月16日に同様の改革案を提出済みで、政府は欧州連合の資金援助を受けつつ、恒久的な防波堤拡張と送還手続きの迅速化を進める。

インドでは、西ベンガル州の特別集中改訂(SIR)に基づく選挙人名簿からの削除・追加に対する異議申し立てが37万件以上も未処理であることが、選挙管理委員会(EC)から最高裁に報告された。ECの回答書によると、これまでに提起された38万2,068件の異議申し立てのうち、裁判所が設置した審判部が処理したのはわずか10万2,231件で、残り37万1,845件が係争中である。最高裁は8月25日、ECにデータ提出を命じており、期限付きの審理と追加審判部の必要性を問うていた。一方、西ベンガル州ではシッダラマーヤ元首相の像が一夜にして設置され、DK・シヴァクマール首相が通過する直前に撤去されるという出来事があった。

韓国では、石油化学製品の価格カルテル疑惑で起訴されたOCIのキム・ユシンCEOとPKCのチャン・ヨンス元CEOら8人の逮捕令状審問がソウル中央地裁で開かれた。検察はLG化学、ハンファソリューションズ、アキョンケミカル、OCI、ロッテファインケミカル、PKC、ユニッドの7社がポリ塩化ビニルや可塑剤など8製品の価格を数年にわたり引き上げ、中東紛争によるナフサ供給混乱を利用して数千億ウォンの不正利益を得たと疑っている。マレーシアでは、パス党のアブドゥル・ハディ・アワン党首が、2014年に米国が国民党(BN)政権打倒の協力を申し出たという主張を法廷で証明すると述べた。米国大使館はこの主張を否定している。

南アフリカでは、女性判事が審理中に停職または特別休暇となる一方、収賄疑惑があるマカム判事が現役で勤務を続けていることへの疑問が呈されている。マカム判事は退去命令事件の判決後に5,000ランドの支払いを受けたとされるが、本人は否定している。ヌォンデ・ムンギビサ=トゥシ判事は判決遅延で2023年に停職となり、ポーティア・ディポ・ファラネ判事は2025年11月に刑事訴追を受けて特別休暇となった。司法サービス委員会(JSC)は、この異なる対応の原則を説明するよう求められている。

米中貿易休戦の行方、習近平訪米を前に通商・AI・レアアースの火種が山積

中国の何立峰副首相が今週末にニューヨークを訪れ、米中両国は2025年に発効した貿易休戦の維持を図る。休戦は11月10日に失効する予定で、習近平国家主席の訪米(9月24日と見られる)に向けた準備段階として、関税や相互課徴金の一部復活を回避する狙いがある。

休戦協定は2025年10月、韓国・釜山で締結された。米国はフェンタニル関連の関税を20%から10%に引き下げ、中国製品への平均関税率は57%から47%に低下した。中国は米国製品への24%の追加関税を1年間停止し、10%の追加課徴金は維持した。協定には農産物貿易の一部再開、フェンタニル原料の化学前駆体の輸出抑制、レアアース輸出規制の部分的停止、港湾料金の凍結が含まれる。

しかし、関税の枠組みは複雑化している。2月に最高裁が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を違憲と判断したため、米国は第122条に基づく10%の全世界関税(7月24日失効)と、第301条に基づく最大12.5%の新関税(約60カ国・地域が対象)を導入した。ペンシルベニア大学の試算では、7月時点の米国の実効平均関税率は6.7%だが、中国は22.8%と主要貿易相手国の中で最も高く、トランプ政権第一期とバイデン政権期の関税が累積している。

今回の協議には人工知能(AI)も議題に加わる。米国は中国とAIの「共通リスク」を協議する用意があるとされ、スコット・ベッセント財務長官は「米国は依然としてAIのリーダーだが、リスクの回避と技術システムの分岐防止について話し合う用意がある」と述べた。ジョージタウン大学のヘレン・トナー氏は、米国が中国のAIリスクへの真剣な取り組みに懐疑的である一方、中国は米国が安全保障を口実に自国の技術進歩を制限しようとしていると疑っていると指摘する。

レアアースも最重要課題だ。中国は2025年4月に7元素と磁石の輸出を世界規模で制限し、産業チェーンにボトルネックを生じさせた。釜山協定で規制は部分的に停止されたが、中国は交渉カードとして保持している。

一方、王毅外相はマルコ・ルビオ国務長官との電話会談で、両国関係が「建設的な戦略的安定」の軌道に乗っていると述べた。中国外務省の声明はルビオ氏の発言を詳述していない。また、習近平氏の訪米にはBYD、Xiaomi、CATLなどの企業幹部が同行する可能性があると報じられている。

米国は習近平・トランプ首脳会談まで新たな関税発表を延期する見通しだ。ブルームバーグは、過剰生産能力に関する貿易調査の結果公表が先送りされ、中国製品への7.5%追加関税が勧告される可能性があると伝えた。3月に始まった調査は韓国、中国、日本など16経済圏を対象とし、強制労働問題に関する別調査では7月に最大12.5%の関税が決定済みだ。

さらに、中国に拘束されている米国人の解放を求める家族の働きかけが強まっている。中国系米国人科学者の陳友林氏は2024年10月に帰国し、母の80歳の誕生日を祝った後、北京の空港で拘束された。670日以上経過した現在も家族は彼と会えず、妻の栄玉芳氏は「彼の声をはっきり思い出せなくなった」と語る。家族はトランプ政権に解放に向けた圧力を強めるよう求めている。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、米・イラン紛争の調停役として重要な役割を果たすパキスタンを「まもなく」訪問すると発表した。第81回国連総会のハイレベル週間を前にした記者会見で、対話の再開を強く訴え、米・イラン間の和平協議の可能性について「対話の確立が絶対に不可欠だ」と述べた。

マレーシアのナジブ元首相、条件付き恩赦で自宅軟禁へ 罰金5000万リンギット支払いが条件

マレーシアのナジブ・ラザク元首相が、連邦直轄領恩赦委員会から条件付き恩赦を認められ、残りの刑期を自宅軟禁で過ごすことになった。国王スルタン・イブラヒムがこの決定に同意した。恩赦の条件として、元首相はSRCインターナショナル事件で課された5000万リンギット(約1230万米ドル)の罰金を支払う必要がある。

恩赦委員会の声明によると、ナジブ氏は2028年8月23日まで自宅軟禁で服役する。条件を満たさない場合、条件付き恩赦は無効となり、残りの刑期を刑務所で服役することになる。ナジブ氏は2022年8月23日からカジャン刑務所で服役しており、2024年1月の恩赦委員会の決定で12年の刑が6年に減刑され、罰金も2億1000万リンギットから5000万リンギットに減額されていた。同氏はSRCインターナショナルの資金4200万リンギットをめぐる権力乱用、背任、マネーロンダリングの7つの罪で有罪判決を受けていた。

この決定に対し、与党統一政府の一翼を担うウンノ(UMNO)のアフマド・ザヒド・ハミディ党首は「元首相と党にとって極めて意義深い」と歓迎し、罰金支払いを支援するための募金活動を開始すると発表した。一方、野党側からは批判の声も上がる。元ウンノ最高評議会議員のイシャム・ジャリル氏は、ンガ・コー・ミン住宅地方政府相の辞任とDAPの連立離脱を求めた。また、ラフィジ・ラムリ氏は、アンワル・イブラヒム首相とパカタン・ハラパン指導部に対し、今回の決定について国民に説明するよう求めた。

ナジブ氏は別の1MDB関連事件でも、2025年12月に高裁で15年の刑を言い渡されており、控訴中だ。この判決は現在のSRC事件の刑期が終了する2028年以降に開始される予定である。今回の自宅軟禁決定は、マレーシアの政治に大きな影響を与えるとみられる。

一方、米国ではマイケル・ジャクソンの遺産管理団体が、パリス・ジャクソンの116万ドル超の弁護士費用請求に異議を唱えた。遺産執行者のジョン・ブランカ氏は、金額が過大だと主張している。パリス氏は2018年に外部法律事務所に支払われた62万5000ドルのボーナスの返還を勝ち取っており、その関連費用として請求していた。

ポーランド首相、ロシアのNATO加盟国への「偽装攻撃」計画を警告 ウクライナ情勢と欧州安全保障の岐路

ポーランドのドナルド・トゥスク首相は、ロシアがウクライナを支援するNATO加盟国に対し、ドローンとミサイルによる攻撃を計画していると警告した。トゥスク首相によれば、モスクワは「事故」を装った攻撃で同盟国の反応を試し、NATO条約第5条の集団防衛発動を回避しようとしているという。

この警告は、ロシア軍がポーランド国境からわずか4キロのヴォルィーニを攻撃し、20人以上が負傷した直後に発せられた。ポーランドはF-16戦闘機を出動させ、国境の防衛を強化した。ヴワディスワフ・コシニャク=カミシュ国防相はX(旧ツイッター)で「ロシアの行動は欧州全体の安全保障を脅かしている」と述べた。攻撃によりポーランド東部の都市では空襲警報が鳴り、空港が一時閉鎖された。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアが攻撃を止めればウクライナも緊張緩和策を取ると表明し、米国の提案する重要インフラへの攻撃停止を支持した。トランプ米大統領はロシアの製油所への攻撃を避け、燃料価格の上昇を抑えるよう求めた。ゼレンスキー大統領は、ロシアが戦争経済への圧力を感じているものの、クレムリンに紛争終結への真の意思はまだ見えないと指摘した。

ロシア軍のアフマット特殊部隊司令官アプティ・アラウディノフ中将は、ウクライナの人口動態が危機的状況にあると述べ、「ウクライナの指導部は最後の一人まで戦う覚悟だ」と語った。ロシア国防省は、ドニプロペトロウシク州とオデーサ州でウクライナ軍のレーダー局と電子戦システムを破壊したと発表した。また、ロシア南部では一晩で629機のウクライナ無人機を撃墜し、モスクワ州には350機以上が飛来した。モスクワ市長セルゲイ・ソビャーニン氏は郊外で64機を破壊したと述べた。ロストフ州では住宅5軒とアパート8棟が損壊した。

ウクライナ南東部ザポリージャでは、ロシア軍の攻撃でショッピングセンターが炎上した。和平交渉は停滞したままだが、米国が戦闘の一時停止を仲介している。

イラン革命防衛隊、ホルムズ海峡でトーゴ船籍タンカーを攻撃・拿捕 トランプ大統領は大規模報復の再開を検討

イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)海軍は金曜日、ホルムズ海峡でトーゴ船籍の石油タンカー「トレンド」を攻撃し、拿捕したと発表した。国営通信IRNAが伝えた。同隊は、この戦略的な航路を「違法通行」しようとしたと主張している。

攻撃を受けたタンカーは船内で火災が発生した後に停止した。イランは2月に米国およびイスラエルがイランを攻撃して以来、ホルムズ海峡の事実上の封鎖を実施しており、自国が選好するルートを回避する船舶を攻撃することで通行料の徴収を図っている。

一方、英国海事貿易庁(UKMTO)は木曜日、オマーンのハサブの北東16海里(29.5キロ)のホルムズ海峡で「安全保障上の事案」が発生したと報告した。乗組員は無事で、報告時点で環境への影響は確認されていないという。UKMTOは対象船舶の詳細を明らかにしておらず、革命防衛隊が言及した船舶と同一かどうかは不明だ。

また、トランプ米大統領はイランに対する大規模な報復攻撃の再開を検討していると述べた。「大きな決断が目前に迫っている」と語り、来週の国連総会で湾岸諸国の首脳と会談した上で次の一手を決定するとした。国務省はイラン代表団が出席することを確認し、イランの暗号資産取引所に制裁を科した。

香港、初の5カ年計画を発表、タレント誘致でGDP1.2%増を目指す

香港政府は2026年9月、初の5カ年計画と施政方針演説を発表した。行政長官ジョン・リーは、各種タレント制度により30万人以上を誘致し、その約20%が中国本土以外からであると明らかにした。これらの人材は毎年GDPに約1.2%の追加をもたらすと述べ、高い資格と高い賃金の仕事に就くことで経済へ貢献すると説明した。

労働・福祉局の最新予測によると、2028年の人手不足は約13万人となり、2023年の予測(18万人)から5万人減少した。クリス・サン局長は、AI開発とタレント誘致政策がこの減少に寄与したとし、トップタレントパス制度(TTPS)がなければ約30万人の不足になっていたと指摘した。政府は若者向けに1万人の新規雇用を創出するプログラムを開始する。

一方、中国は平陸運河を開通させ、南西部の内陸部と東南アジアを結ぶ新たな海路を確保した。香港では北部メトロポリスを「香港の深セン」と位置づけ、イノベーションを推進する。また、初代行政長官トン・チーホワの国葬が週末に執り行われ、厳重な警備が敷かれる。

経済 (Economy)

原油供給の混乱続く、フーシ派の紅海進攻とサウジのパイプライン停止で世界経済に試練

米国とイスラエルによるイラン攻撃が2月末に始まって以来、世界の石油・天然ガス供給は悪化の一途をたどり、価格は上昇を続けている。原油価格は戦争開始から40%以上急騰し、ガソリンとディーゼルは価格が2倍となる前例のない水準に達した。イエメンのフーシ派が紅海沿岸の要衝を制圧し、バブ・エル・マンデブ海峡を通る航路を脅かしたことで、サウジアラビアの東・西パイプライン停止と相まって、中東のエネルギー供給網はかつてない圧力にさらされている。

サウジアラビアの東・西パイプラインは、フーシ派と連携するイラクのシーア派民兵とみられるドローン攻撃で損傷し、紅海のヤンブー港への原油積み出しが停止した。このパイプラインは日量最大700万バレルを輸送でき、ホルムズ海峡封鎖後もサウジが原油を輸出するための生命線だった。サウジはオマーンのソハール港沖での船間積み替えなど代替ルートを模索し、パイプラインの復旧を急いでいるが、復旧までの期間は日単位から週単位まで諸説あり、市場の不確実性は依然として高い。

原油価格は週後半に3日連続で約1%下落し、ブレントは1バレル103ドル台、WTIは100ドル台で推移した。サウジの輸出能力回復への期待が供給懸念を上回った形だが、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡でトーゴ船籍のタンカーが攻撃を受けたと発表するなど、地政学的リスクは燻り続けている。米国とイランの和平交渉は6月の暫定合意が崩壊して以降停滞しており、来週の国連総会で協議される見通しだ。

このエネルギー危機は世界経済に深刻な影響を及ぼしている。欧州ではディーゼル価格が過去最高を更新し、ユーロ圏と米国では利上げが再開された。米連邦準備理事会は0.25%の利上げを実施し、年内にさらに1回の追加利上げを見込む。日本銀行も金利を31年ぶりの高水準に引き上げる見通しだ。一方、金価格は1オンス4,352ドル台まで上昇し、インフレヘッジとしての需要が高まっている。中国の原油価格は1バレル130ドルと過去最高を記録し、世界最大の原油輸入国として供給逼迫の影響を直接受けている。

中東情勢の行方次第では、エネルギー価格の高騰が世界経済の回復をさらに圧迫する可能性がある。サウジのパイプライン復旧とホルムズ海峡の航行自由化が当面の焦点となる。パキスタンはイランと米国の仲介役として外交努力を続けており、中国も国連総会での協議を後押ししている。フーシ派の紅海支配は、ホルムズ海峡に代わる代替ルートの脆弱性を浮き彫りにし、西アジアのエネルギー供給における優位性に影を落としている。

日銀、31年ぶり高水準の1.25%へ利上げ 米FRBに追随し追加利上げ示唆

日本銀行は18日、政策金利を1.25%に引き上げた。1995年以来の高水準となる。7対2の投票で決定し、ハト派の浅田統一郎氏と佐藤綾野氏が反対した。日銀は卸売物価の上昇が続き、企業間取引の価格圧力が消費者物価に波及し始めていると指摘した。基調的なインフレ率は2%目標に接近しているという。

今回の利上げは市場で広く予想されていた。ブルームバーグが9月4日から10日にかけて調査した52人のエコノミスト全員が利上げを予測していた。米連邦準備理事会(FRB)が16日に政策金利を0.25%引き上げて3.75%〜4.00%としたことを受けた動きでもある。米国は円安を止めるため日銀に行動を求めており、米財務長官のスコット・ベッセント氏は今月のG20財務相会合で植田総裁と会談し、円安対策への「断固たる」金融政策を支持すると表明した。

政策金利は日銀が推計する名目中立金利(1.1%〜2.5%)の範囲内に入った。今後どの程度まで引き上げるかが焦点となる。植田総裁は午後3時30分から記者会見を開く予定で、市場は追加利上げの時期とペースに関する手掛かりを探る。アナリスト予想では、来年3月末までに1.5%、2027年第2四半期に1.75%への引き上げが見込まれている。

日銀は欧州中央銀行(2.5%へ利上げ)やFRBと比べると依然として低い金利水準にある。金利差の拡大は円安を招き、輸入コストとインフレを押し上げる要因となる。イラン戦争に起因するエネルギー価格高騰、拡張的な財政政策、AI投資需要の急増が世界的なインフレリスクを高めており、主要中央銀行は対応を迫られている。

FRB利上げと中東情勢が世界市場を揺るがす、インフレ抑制へ各国中銀が相次ぎ行動

米連邦準備制度理事会(FRB)は水曜日、約3年ぶりとなる0.25ポイントの利上げを実施し、政策金利を3.75〜4.00%の範囲に引き上げた。ケビン・ウォーシュFRB議長は記者会見で、中東戦争によるエネルギー価格高騰を背景にインフレが「長期間にわたり高すぎる」状態にあると述べ、今回の決定を「公正」かつ「真剣」なものだと評価した。市場はこの決定を好感し、ニューヨーク証券取引所ではダウ平均が0.61%高、S&P500が1.14%高、ナスダックが1.69%高と、主要指数がそろって上昇した。

FRBの決定は、トランプ大統領の利下げ要求に屈しなかった形となり、市場参加者からは中央銀行の独立性が再確認されたとの評価が上がった。クレセットのアナリスト、ジャック・アブリン氏は「FRBは金融界からの信頼を勝ち取った」と指摘した。一方、原油価格の下落も投資家心理を支えた。ブレント原油は0.95%下落して1バレル104.82ドルとなり、米エネルギー長官クリス・ライト氏が、ホルムズ海峡封鎖の迂回ルートであるサウジアラビアの東西パイプラインがまもなく稼働再開するとの見通しを示したことが背景にある。

世界の中央銀行も連動して動きを見せた。日本銀行は金曜日、政策金利を31年ぶりの高水準となる1.25%に引き上げた。円安と中東紛争による輸入物価上昇がインフレ圧力を強めており、植田和男総裁は追加利上げの可能性を示唆した。オーストラリア準備銀行(RBA)は9月28〜29日の理事会で追加利上げに動く公算が大きく、市場は9月利上げの確率を95%と織り込んでいる。英中銀は政策金利を据え置いたが、中東戦争が長引けば利上げが必要になる可能性があると警告した。

アジア市場では、ソウル株式市場のKOSPI指数が2.66%高の6,894.23で取引を終え、外国人投資家が買い越しに転じた。半導体大手のサムスン電子とSKハイニクスは、エヌビディアCEOのジェンスン・ファン氏が来年のチップ販売台数が今年の2倍になるとの見通しを示したことを受け、それぞれ3.37%、6.42%上昇した。マレーシア市場では、FRBの追加利上げ観測がリンギットと債券市場に圧力をかけるとの見方が出ているが、国内需要と輸出能力が下支えになるとの指摘もある。

今後の焦点は、FRBが年内にさらに利上げを行うかどうかだ。FRBの最新の予測では、18人の政策委員のうち16人が年末までに政策金利が現在の水準を上回ると見込んでおり、少なくともあと1回の0.25ポイント利上げが想定されている。シンガポールでは、この利上げを受けて住宅ローン金利が上昇する可能性が指摘され、固定金利と変動金利の選択を巡って借り手の判断が問われている。中東情勢の行方と各国中銀の政策対応が、世界経済の先行きを左右する主要な変数となっている。

アジア経済、原油高とインフレ動向に揺れる

アジア各国で経済指標にばらつきが出ている。インドでは中東紛争による供給途絶で原油輸入額が急増し、日本ではインフレが4か月ぶりに減速した。一方、マレーシアは貿易黒字を76か月連続で記録し、韓国では外国人投資家が今年初めて買い越しに転じた。

インドの8月の原油輸入量は前年同月比3%減の1900万トンだったが、輸入額は18%増の117億ドルに達した。石油計画分析セル(PPAC)の暫定データによると、インドの原油バスケット平均価格は1バレル当たり90.19ドルと、前年の69.11ドルから急騰した。ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ経由の供給混乱に加え、運賃と戦争保険料の上昇がエネルギー調達コストを押し上げた。石油・ガス純輸入額は前年同月と同じ93億ドルだった。

日本では総務省が発表した8月の生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)が前年同月比1.7%上昇し、7月の1.8%から減速した。政府によるガソリンと電気料金への補助金がインフレ抑制に寄与した。日銀はこの日、政策金利を0.25ポイント引き上げて1.25%とする見通しで、これは30年超で最高水準となる。中東危機による原油価格の高騰が今後、物価を押し上げる可能性がある。

韓国では外国人投資家が8月に韓国株を今年初めて買い越した。金融監督院のデータによると、純買い額は3440億ウォン(2億4840万ドル)で、7か月連続の売り越しに終止符を打った。しかし9月に入り、サムスン電子とSKハイニクスを中心に再び売り越しに転じている。

マレーシアの8月の総貿易額は前年同月比43.4%増の3540億リンギットに拡大した。統計局によると、輸出は45.5%増の1910億リンギット、輸入は41.1%増の1630億リンギットだった。貿易黒字は77.1%増の281億リンギットとなり、2020年5月以来の黒字を76か月連続で記録した。一方、マレーシアの8月のインフレ率は1.9%と、7月の1.8%から上昇した。輸送費の上昇が主因で、公共交通サービスと自家用車の運営費がそれぞれ10.5%と1.8%上昇した。

中東情勢の緊迫化はエネルギー価格を通じてアジア各国の物価と貿易に波及している。インドの輸入コスト増加は国内のインフレ圧力となり、日本では日銀の利上げ判断に影響を与える。マレーシアは輸出主導で成長を維持する一方、インドとの貿易枠組み見直しでは構造的障壁の除去が課題となる。今後の原油価格の動向が、アジア経済の安定性を左右する鍵となるだろう。

アルゼンチン第2四半期GDPは前期比0.6%減、失業率7.9%に上昇——IMF調査団が月曜に到着へ

アルゼンチン国家統計局(INDEC)は18日、2026年第2四半期の国内総生産(GDP)が前期比0.6%減となったと発表した。2024年以来の四半期ベースでのマイナス成長であり、民間消費は2.4%減少した。一方、前年同期比では2.0%の成長を維持した。失業率は7.9%に上昇し、全国で約180万人が失業状態にあると推定される。

同日の為替市場では、カントリーリスクが515まで上昇し、ブルー・ドル(非公式レート)は1,535ペソ(買値)/1,555ペソ(売値)に軟化した。卸売レートは52週高値圏から1,501ペソ/1,510ペソへと後退した。国際通貨基金(IMF)のスタッフ調査団は月曜日(21日)にアルゼンチンへ到着する予定だ。

今回のGDP統計は、アルゼンチン経済が2024年以来初めての四半期縮小に陥ったことを示す。インフレ抑制と財政再建を進めるミレイ政権にとって、景気後退の兆候と失業率上昇は今後の政策運営の重荷となる。IMF調査団の訪問を前に、市場は為替・金利政策の行方に注目している。

社会 (Society)

2025年、環境活動家124人が殺害される――コロンビアが最多、世界の社会運動に影

2025年、世界で少なくとも124人の土地・環境活動家が殺害された。Global Witnessの新報告書によると、記録された殺害の85%はラテンアメリカで発生し、コロンビアが4年連続で最多の39人、ブラジルが26人で続いた。2012年の追跡開始以来、殺害・失踪した活動家は累計2,375人に達する。

報告書は、殺害数の減少(2024年は142人、2023年は196人)を楽観視すべきではないと指摘する。紛争や抑圧的な環境では多くの事例が報告されず、検証も困難なため、実際の数はさらに多い可能性がある。殺害された人の4分の3以上は小規模農家、先住民、アフリカ系住民で、先住民だけで44人が数えられた。土地紛争が殺害の半数以上に関連し、鉱業・採掘業が11件、伐採業が8件、農業企業が6件に結びついた。

一方、アルゼンチンでは国道12号線で正面衝突が発生し3人が死亡、バングラデシュではバス事故で2人が死亡、インドではHR専門職の男性が元同僚らに殺害される事件が起きた。パキスタンではアワランで3人のテロリストが排除され、イスラエル軍はガザ攻撃で10月7日に侵攻したハマス戦闘員2人を殺害したと発表した。

Global Witnessは、活動家への脅威が土地と天然資源をめぐる広範な闘争の中で理解されるべきだと強調する。米国、ドイツ、英国などの伝統的ドナーによる援助削減が、遠隔地や環境に敏感な地域で活動する人権団体への支援を減らし、状況を悪化させている。報告書の主執筆者トビー・ヒル氏は、活動家が森林伐採や汚染された河川など環境破壊に関する重要な情報を提供していると述べた。

米国で航空事故相次ぐ、F-16墜落と取材ヘリの悲劇、マレーシアでは調査進む

米国ミシガン州で訓練飛行中のF-16戦闘機が墜落し、パイロットは脱出して無事だった。一方、ロサンゼルスではバスとSUVの衝突事故を取材中のテレビ局ヘリコプターが墜落し、乗員2人と地上の男性1人が死亡。運転手は殺人罪で起訴された。さらにマレーシアのサラワク州では、先月発生した医療用ヘリコプター墜落事故の調査が続いている。

ミシガン州トラバースシティ近郊で木曜日、テキサス州空軍州兵第149戦闘航空団所属のF-16が定例訓練中に墜落した。パイロットは射出座席で脱出し、地元病院に搬送された。米軍の発表によると、パイロットは墜落直前に航空管制官へ鳥がエンジンを故障させたと報告し、最寄りの空港へ誘導される際に脱出の必要を訴えたという。墜落現場周辺では半径1.6キロ圏内に避難命令が出され、黒煙と爆発が目撃された。

ロサンゼルスでは、火曜日に発生した市バスとSUVの衝突事故を取材していたNBC4のヘリコプターが墜落。パイロットのジョージ・マルシニウ氏、レポーターのエリアナ・モレノ氏、地上にいた29歳のグアテマラ人男性エディ・フェルナンド・グティエレス・メヒア氏が死亡した。検察は、SUVを運転していたベイリー・リン・リオス被告(36)が薬物の影響下で逆走し、赤信号を無視してバスに衝突したとして、乗客2人(ダニエル・カスティーヨさん46歳、ゲージ・ウェイダさん31歳)への殺人罪で起訴した。ヘリの墜落原因については、国家運輸安全委員会(NTSB)が機内の最後の映像を重要な証拠として調査中だ。映像ではコックピット内の警報音とともに「引き起こせる?」という女性の声が記録されており、航空安全専門家はエンジン出力の喪失とメインローター回転数の低下を示唆していると分析する。

マレーシアのサラワク州では、9月8日に発生した保健省のフライング・ドクター・サービス機の墜落で、ベテランパイロットと医療従事者4人の計5人が死亡した。航空安全専門家の准教授ムハマド・ハルン・ムハマド・スフィアン少佐は、機体の年齢だけでは安全性を判断できず、飛行時間や整備履歴、部品の状態、飛行プロファイル、予知保全などが重要だと指摘する。ICAO付属書13の原則に基づく調査では、残骸や部品、整備記録、運用履歴の検証が予定されており、予備報告書は事故から約30日後、完全な報告書は1年以内に公表される見通しだ。保健省は調査が終わるまで同サービスを一時停止している。

一連の事故は航空安全への関心を改めて高めた。ミシガン州のF-16墜落では鳥との衝突が原因の可能性が浮上し、ロサンゼルスでは追悼の集いが開かれた。NTSBによる調査結果が、今後の安全対策に影響を与えると見られる。

南アの矯正施設、組織犯罪の拠点と化す マドランガ委員会で判明

南アフリカの矯正施設が組織犯罪の実質的な拠点となっており、収監中のギャング幹部が刑務所外の活動を円滑に指揮している実態が、マドランガ調査委員会で明らかになった。矯正サービス国家委員長のマクゴティ・トバクガレ氏が証言した。委員会は、犯罪組織が法執行機関や検察、刑務所に浸透しているかどうかを調査している。

トバクガレ氏は、刑務官が禁制品の密輸や受刑者への携帯電話の提供に関与していると指摘した。携帯電話の押収数は2023/24年度の3万251台から2025/26年度には3万9242台に急増した。これは施設内の捜索強化と収容人口の増加を反映しているという。受刑者数は約16万9118人で、押収数は受刑者4人に1台の割合に相当する。ただし、同じ端末が複数回押収される場合もあるため、受刑者4人に1人が携帯電話を持っているとは限らないと同氏は注意を促した。

施設の過密状態も深刻な問題だ。今年4月から6月の間に受刑者数は3%増加し、維持費として約7億ランドの追加支出が必要となった。同省は閣僚に警報を送ったという。受刑者1人の維持には1日約480ランドかかる。

トバクガレ氏は、収容施設内のギャング活動についても詳述した。26s、27s、28sといったナンバーズ・ギャングは、それぞれ金銭獲得、規範執行と暴力、密輸などの役割を担う。さらに、ビッグ・ファイブと呼ばれる刑務所ギャングは他のギャングと混ざらず、特権と引き換えに刑務官と直接協力する。このビッグ・ファイブは、委員会が調査している同名の犯罪カルテルとは別物だという。

同氏は、イスラム国(ISIS)に関連する収監者についても言及した。今年5月5日、ホークス(南ア警察の特別捜査部門)が、ISIS関連の被収容者を一般の受刑者から分離するよう要請した。彼らが携帯電話を所持していたことが、外部との許可されていない通信の証拠となった。

一方、クワズールー・ナタール州地域委員のムニケルワ・ンクセレ氏が、唯一の年次財務利益開示を提出していない上級管理職であることも確認された。トバクガレ氏は生活監査を命じ、開示漏れは懲戒事由の一部になると述べた。

さらに、3人の高リスク受刑者が東ボンウェニ超最大刑務所から西ケープ州に移送された件にも言及した。その中には、同国最高位のギャングとされるジョージ・“ヘウェルド”・トーマスが含まれる。移送はトバクガレ氏の知らないところで行われ、関係した職員らがこの過程でンクセレ氏を関与させたとされる。移送は西ケープ州のギャング環境を不安定化させ、深刻な保安上のリスクをもたらした。トーマスは後に州外へ移され、ンクセレ氏に対する懲戒手続きは継続している。

同省は他の法執行機関と省庁間タスクチームを結成し、組織犯罪に焦点を当てているが、その運用上の成功はまだ評価されていないという。委員会は金曜日に再開される予定だ。

科学・技術 (Science & Tech)

祖母の転倒をきっかけに生まれた発明、高齢者の車の乗り降りを支える「Cargility」が特許を取得

米ミシガン州アナーバー出身の22歳の工学部学生、ミーラ・ラマスワミ氏が、高齢者の車への乗り降りを安全にする携帯型補助装置「Cargility」を開発し、米国特許商標庁(USPTO)から特許を取得した。祖母の転倒事故をきっかけに生まれたこの装置は、車のドア枠に取り付けて地面まで届く支柱と手すりを形成し、高齢者が安定した姿勢で乗り降りできるようにするものだ。

ラマスワミ氏の祖母は転倒後、ケガは治ったものの「恐怖が残り」、旅行に出かけることが減っていった。この小さな不安定さが高齢者の孤立や自立の喪失につながると考えた同氏は、既存の歩行器や杖、介助者の手では車の横という狭い空間に対応できないと判断。携帯性と耐久性を備え、様々な車種に対応できる装置の開発に着手した。

Cargilityは車のドア枠にある金属部品に接続し、地面まで届く可動式の脚部で手すりを支える構造だ。座る動作と立ち上がる動作の両方を補助し、素早い方向転換や掴まる場所を探す必要性を減らす。理学療法士の役割を代替するものではなく、日常の移動をより安全にすることを目的としている。

2022年にはヘンリー・フォード博物館で開催された発明家コンベンションで、革新性、安全性、Make the World、グランプリの4部門で最高の栄誉を受けた。2025年12月にはUSPTOから「Vehicle Access Mobility Tool」の名称で正式に特許を付与され、同年には母のプラヴィーナ・ラマスワミ氏と共に会社を設立。先月、このサービスを一般公開した。

製品開発では、高齢者やその介護者が快適さを感じられるよう「共感性」も重視された。祖母の事故がもたらした教訓が、高齢者の移動の自由を守る新たな技術として結実した形だ。

NYT、OpenAIとMicrosoftによる記事の「驚くべき盗用」を主張

ニューヨーク・タイムズ(NYT)は木曜日に公開された裁判文書で、OpenAIが人工知能モデルの訓練に数百万の記事を使用した際、「前例のない驚くべき盗用」を犯したと主張した。同紙は、サンフランシスコ拠点のAI企業が1000万以上の記事からコンテンツを抽出し、そのほぼ3分の1がNYTのものだったと指摘する。

裁判文書によれば、マイクロソフトの応用科学部門ディレクター、ブレント・ヘクト氏はこれを「前例のない驚くべき盗用」であり、おそらく「人類史上最大の労働の盗用」と呼んだ。ヘクト氏はまた、OpenAIが自社システム内のNYTや他の原告のコンテンツを特定する際に「偶発的な隠蔽」を行った可能性があると警告したという。一方、マイクロソフトの広報担当者はAFPに対し、ヘクト氏の発言は「従業員個人の見解」であり「会社の立場を代表するものではない」と述べた。

NYTは3年前、ニューヨーク連邦裁判所にOpenAIとマイクロソフトを提訴した。両社がNYTの著作権で保護された素材を盗用し、OpenAIの主力モデルであるChatGPTを訓練したとされる。マイクロソフトは2019年に初めてOpenAIに出資した。この訴訟には、CNETなどを所有するジフ・デイビス、雑誌『マザー・ジョーンズ』の親会社、調査報道サイト『ザ・インターセプト』、全米の複数の地方紙も加わっている。

原告側は、OpenAIのモデルが使用したとされる記事ごとに損害賠償を求めているが、罰金の総額は不明だ。2022年末のChatGPT投入以降、OpenAIは世界中の多くの報道機関とコンテンツライセンス契約を結んできたが、生成AIソフトウェアがネットニュースサイトへのトラフィックを減らしているとの懸念は続いている。AI企業はユーザーへの回答にリンク付きの引用を追加することで懸念を和らげようとしてきたが、不十分だとの批判がある。裁判文書によると、OpenAIのエンジニアの一人は「リンクをどれほど目立たせて表示しても、ユーザーはクリックしない」と認めた。

OpenAIとマイクロソフトは、ニュースコンテンツの使用は変容的であり、著作権法の「フェアユース」に該当すると主張する。9月初旬、米司法省はOpenAIとマイクロソフトを支持する意見書を提出し、「科学的進歩」、経済成長、「国家安全保障」に言及した。原告側は自分たちに有利な略式判決を求めている。連邦判事シドニー・スタインがこれを認めれば、裁判は開かれないが、判決は2027年まで下されない見込みだ。

文化 (Culture)

エド・シーラン、ガザ戦争の政治に揺れる マックルモア解任でツアー存続の危機

英歌手エド・シーランが、ガザ戦争をめぐる政治の渦に巻き込まれ、キャリアの危機に直面している。ボイコットの呼びかけとサポートアクトの相次ぐ離脱により、彼の「ループ・ツアー」とイメージは揺らぎ、世界最大級のスターといえども中東紛争の影響を免れないことを浮き彫りにした。

事の発端は、9月4日と5日にニュージャージー州メットライフ・スタジアムで行われたシーランのコンサートで、オープニングアクトを務めたラッパーのマックルモアが「フリー・パレスチナ」と叫び、パレスチナ人の権利を支持したことだった。その後、億万長者のロバート・クラフト氏を含む米スタジアム所有者らの圧力でマックルモアがツアーから外されると、シーランは友人と表現の自由を守らなかった、ガザについて語る勇気がない、原則より金銭を優先した、などと批判を浴びた。

ビリー・アイリッシュの兄で歌手のフィニアスは「アーティストは抑圧された者のために声を上げたとき、沈黙させられてはならない」と述べ、他の3組のサポートアクトとともに火曜日にツアーを離脱した。ベテラン歌手のビリー・ブラッグは「私がエドなら、プライドを捨ててツアーをキャンセルする」と助言した。パレスチナの文化ボイコットを推進するPACBIはマックルモアの復帰を求め、「それまで、オープニングアーティスト、観客、可能ならスタッフにも共犯のツアーをボイコットするよう呼びかける」と声明を出した。

シーランは今週の声明で「プロのプラットフォームを政治に使わない」と主張したが、2022年のロシア侵攻後のウクライナ支援コンサートに出演し、2018年にはブレグジットに警告する公開書簡に署名している。ロンドンの現代音楽パフォーマンス研究所(ICMP)で教える音楽ライターのニール・マーチ氏は「音楽は決して政治的に中立だったことはない。それは言い訳であり、誰も本気で信じていない」と語った。

一方、マックルモアは木曜日、シーランツアーでの収益から100万ドルをパレスチナの6つの組織に寄付すると発表した。彼はロバート・クラフト氏にも同額の寄付を呼びかけ、「私たちが何について意見が異なっても、これについては同意できるだろう。パレスチナ人の命は守る価値がある」と述べた。クラフト氏はこれに応え、シーランが地域支援のために200万ドルの寄付を提案し、それに同意したと明らかにした。シーラン自身は、マックルモア解任はプロモーターと会場側の決定であり、自分は「共犯者ではない」と説明した。

この騒動は、ファンの間にも亀裂を生んだ。妻をALSで亡くしたというファンはシーランの音楽との深いつながりから参加を決めたが、ユダヤ系米国人のファンはマックルモアの解任を歓迎した。ツアーの今後に不安を抱くファンもいる。シーランの最も熱心なファンは離れないだろうが、よりカジュアルなリスナーは疎外感を抱くかもしれないと、英ダラム大学ビジネススクールのグレッチェン・ラーセン教授は指摘する。彼女は「彼の対応は中立的ではない。なぜなら彼は『権力』が特定のアーティストを沈黙させることを許し、それに従ったからだ。彼の最初の対応は政治的立場である」と述べた。

ギジ・ハディッドもマックルモアへの支持を表明し、「私たちはあなたと共に立つ」とインスタグラムに投稿した。この騒動は、エンターテインメント業界がガザ戦争をめぐる論争にますます引き込まれていることを示しており、シーランのツアーが今後どうなるかは不透明だ。彼は土曜日に予定される次のコンサートを前に、イメージ回復に追われている。

マルクス・アウレリウスの「時間の川」、現代の若者に響くストア哲学の知恵

ローマ皇帝でありストア派哲学者でもあったマルクス・アウレリウスは、その著作の中で「時間は出来事によって形成される川のようなものであり、激しい流れである。何かが見えたかと思うと、それは流され、別のものがその場所にやってくる」と記した。二千年を経た今、その言葉はストア哲学を発見する若者たちの心に深く響いている。

この比喩は、ストア派哲学者たちが持っていた存在の捉え方を要約している。水は絶えず前進し、過ぎ去ったばかりのものを保持することを妨げる。同様に、あらゆる瞬間は現れ、過去となり、次の瞬間に場所を譲るのだ。

このイメージは、マルクス・アウレリウスより数世紀前に生きたヘラクレイトスの思想に既に存在していた。歴史家ジョシュア・J・マークの解釈によれば、ギリシャの哲学者は、人生の本質そのものが変化であると主張していた。変化は人生の一面ではなく、人生そのものであり、それゆえ変化に抵抗することは人生そのものに抵抗することになる。

ストア派はその伝統の一部を受け継ぎ、自然の秩序を受け入れることに焦点を当てた哲学を発展させた。彼らは、私たちが本当にコントロールできるのは、私たち自身の考え、行動、判断だけだと主張した。

マルクス・アウレリウスにとって、時間の経過は穏やかな動きである。彼が「激しい流れ」について語るのは、出来事が素早く流されると考えているからだ。この比較は、快い出来事と苦しい出来事を区別しない点で強力である。すべてが同じ流れの一部なのだ。

このように解釈すると、川のイメージは「注意」との特定の関係を育むよう促す。どの瞬間もどうせ逃げていくのであれば、それに強くしがみつくことは、それが生み出す苦しみを味わう以外に何の役にも立たない。

マルクス・アウレリウスは、私たちが心配するのをやめることを望んでいるのではなく、必然的に消えていくものにしがみつくのをやめることを望んでいる。私たちは水を眺めながら、それを保持しようとせずにいることができる。難しいことだが、皇帝によれば可能なのである。

この考察は驚くべき現代性を保っている。過去に囚われたり、将来何が起こるかを絶えず予測したりすることが容易な時代において、それは、私たちが実際に行動できる唯一の瞬間である現在に立ち返るよう促す。

マルクス・アウレリウス(121年-180年)は貴族の家庭に生まれ、幼少期に父を失うと、後の皇帝アントニヌス・ピウスに養子として迎えられ、後継者とされた。青年期には非常に手厚い教育を受け、ストア哲学が特に重要視された。161年、アントニヌス・ピウスの死後、彼は皇帝となった。

彼の治世は多くの紛争によって特徴づけられた。ローマはパルティア帝国との戦争、その後中央ヨーロッパでの様々なゲルマン民族との戦争に直面しなければならなかった。また、アントニヌスの疫病として知られる深刻な流行病にも苦しんだ。

「哲学者皇帝」として知られる彼は、ストア主義の原則を自身の統治に適用しようと試みた。中央ヨーロッパでの軍事遠征中に、この言葉の出典である『自省録』を書いた可能性がある。そこでは、死、自制、逆境、義務、人生の儚さ、そして変えられないものを受け入れることの重要性といったテーマについて考察している。

彼はゲルマン民族との戦役中、ウィンドボナ(現在のウィーン)で亡くなった。後継者に息子のコモドゥスを指名したが、これがおそらく彼の最大の政治的誤りだった。コモドゥスの治世は、いわゆる「五賢帝」の時代からの大きな変化をもたらした。

スポーツ (Sports)

サンバ、デビュー戦で2得点の活躍 マンチェスター・シティがリーグカップでノリッジに5-0勝利

マンチェスター・シティは17日のリーグカップ3回戦でノリッジ・シティを5-0で下し、4回戦進出を決めた。デビュー戦となった17歳のフロイド・サンバが2得点を挙げ、マン・オブ・ザ・マッチに選出された。エンツォ・マレスカ監督はサンバを今夏にトップチームへ昇格させており、この試合では慣れない9番で起用したが、期待に応える形となった。

試合はサンバが前半28分にアランのクロスをヘディングで合わせて先制。その後、レイアン・シェルキが追加点を奪い、後半にはアランが初出場で初ゴールを記録。サンバがさらにカーブシュートで2点目を決め、最後はライアン・マカイダーがダメ押しした。シティは次戦でブライトンとホームで対戦する。

一方、欧州デビュー戦となったボーンマスはアウェーでレアル・ソシエダに2-1で勝利した。ジャスティン・クライファートとレイアンが前半に得点し、セルヒオ・ゴメスが1点を返したが、守護神ジョルジェ・ペトロヴィッチの好守もあり逃げ切った。ユヴェントスはNECナイメーヘンに5-0で快勝し、ニック・ヴォルテマーデがPKで移籍後初ゴールを記録。セルティックはフェレンツヴァーロシュに1-3で敗れ、欧州での課題を露呈した。

また、ロワイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズのレレボヒレ・モフォケンはEL初ゴールを挙げ、南アフリカ代表復帰を祝う形となった。クアラルンプールではクチン・シティがACL2でプノンペン・クラウンに1-2で惜敗し、後半終了間際の失点で勝ち点を逃した。

デビスカップとラグビーW杯、サッカー界の混乱——スポーツ界の最新動向

アルゼンチンはネウケンのルカ・チェ競技場でトルコとのデビスカップ戦に臨む。フランシスコ・セルンドロとティアゴ・ティランテがシングルスで出場する見込みだ。一方、フランスはアルチュール・フィルスの欠場により、カナダ戦を新たな布陣で戦う。ラグビーでは南アフリカが2027年ワールドカップ前の最終調整としてフィジーと対戦することを発表した。サッカー界では、FIFAのワールドカップ売却計画をめぐる文書公開をイングランドサッカー協会が求めており、混乱が続いている。

アルゼンチンのデビスカップチームは、トルコ戦に向けて順調な調整を見せている。セルンドロとティランテは試合形式の練習を行い、ティランテは203キロのサーブを披露した。マリアノ・ナボネも練習に参加し、ダブルスではアンドレス・モルテニとギド・アンドレオッツィが朝に調整した。トルコには世界ランキング200位以内の選手がおらず、アルゼンチンにとっては有利な対戦となる。しかし、デビスカップでは事前の予想が覆ることも多い。抽選は9月18日に行われる。

フランスのデビスカップ事情は異なる。世界11位のフィルスが体調不良を理由にカナダ戦を欠場する。フランスチームはアルチュール・リンデルネク、アレクサンドル・ミュレール、カンタン・アリス、バンジャマン・ボンジ、ピエール=ユーグ・エルベール、ポール=アンリ・マチューで構成される。デビスカップは新世代の選手たちにとって魅力が薄れており、その存続が問われている。

ラグビーでは、南アフリカのスプリングボクスが2027年ワールドカップに向けて重要な準備を進めている。ラッシー・エラスムス監督は、フィジーとのテストマッチを9月18日にシドニー北部のゴスフォードで行うと発表した。これはワールドカップ開幕の2週間前であり、両チームにとって最終調整の場となる。南アフリカは3連覇を目指しており、フィジーは2023年大会のベスト8進出を誇る。また、南アフリカは9月27日にパースでオーストラリアと対戦する。この試合はワールドカップのノックアウトステージに向けた重要なリハーサルとなる。

サッカー界では、FIFAのインファンティーノ会長が提案したワールドカップの株式売却計画が白紙撤回された。イングランドサッカー協会のデビー・ヒューイット会長は、この計画に関する全文書の公開をインファンティーノに求めた。UEFAはインファンティーノへの信頼を失ったと表明し、米国裁判所に文書開示を申請している。さらに、来年3月のFIFA総会でインファンティーノに対抗する候補を擁立する構えだ。インファンティーノは再選を目指す意向を示している。

アルゼンチンのコパ・アルヘンティーナでは、ベレスがボカ戦での外国人選手登録問題をめぐる抗議が続いている。AFAの裁定は9月22日に延期された。ベレスの会長ファビアン・ベルランガは、ボカが6人の外国人選手を登録したと主張し、試合の没収(3-0での勝利)を求めている。ボカ側は、出場しなかったアンヘル・ロメロの存在を挙げ、行政上のミスだと反論している。この問題の行方次第で、ラシンとの準々決勝の対戦相手が決まる。