カナダのマーク・カーニー首相は17日、欧州議会(ストラスブール)での演説で、欧州連合(EU)との「新たな同盟」を提唱し、米ドナルド・トランプ大統領の報復関税の脅威を退けた。前日に欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長がカナダをEU初の「準加盟国」とする構想を表明したことを受け、カーニー氏は「欧州とカナダは共に強くなる」と述べ、民主主義の「灯台」となることを目指すと強調した。
カーニー氏は演説で、貿易・防衛・重要鉱物・人工知能(AI)・エネルギー・宇宙・金融サービスにわたる統合の深化を提案した。経済統合が「武器化」され、関税が圧力手段として使われる現状を批判し、「第三のブロックを目指すものではない」と述べた上で、「我々は他者を支配するための権力を求めない。誰も我々の開かれた市場を支配し、主権を損ない、領土の一体性を脅かし、自由と民主主義、法の支配を損なうことがないよう、回復力を追求する」と語った。
一方、トランプ大統領はこの構想を「馬鹿げている」と評し、EUがカナダとの関係強化を進めるなら「非常に厳しい関税」を課すか、欧州との貿易を停止すると警告した。これに対し欧州委員会のオロフ・ギル報道官は「カナダとの連携強化は誰かに対するものではなく、我々の共通の強さのためのものだ」と反論した。フランスのベンジャミン・アダ欧州担当相も「欧州の政治・地政学的な方向性を決めるのは米国ではない」と述べ、米国の拒否権を否定した。
EU条約に「準加盟国」の地位は現存せず、新たに創設する必要がある。ドイツはウクライナに同様の地位を提案しており、EU27カ国の承認が求められる。カーニー氏は「重要なのは名称ではなく中身だ」と述べ、10月29日・30日にモントリオールで開催されるカナダ・EU首脳会議で詳細を協議する意向を示した。
カナダは輸出の約7割を米国に依存しており、トランプ政権の関税政策と「51番目の州」論に揺れてきた。欧州との関係強化は、米国依存からの脱却を図る戦略的な選択となる。両者は既にCETA(包括的経済貿易協定)により貿易を拡大しており、2016年以降の財・サービスの貿易額は80%以上増加した。今年、カナダはEU非加盟国として初めて防衛融資プログラムに参加している。