8月26日に中国・ネパール国境のヒマラヤ山岳地帯で発生した氷河崩壊に伴う大規模な洪水と土石流で、両国の死者は1270人を超え、行方不明者は4757人に達した。ネパールの災害当局は4日までに1252人の遺体を収容し、4216人が依然として行方不明であると発表した。中国チベット自治区では21人の死亡と541人の行方不明が確認されている。ネパールのシシル・カナル外相は外交団への説明で「ヒマラヤの津波」と表現し、「現地の現実は映像が伝えるよりもはるかに深刻だ」と述べた。
国連ネパール調整官のリラ・ピーテルス・ヤヒア氏はカトマンズでの記者会見で、被災地への支援物資輸送が「非常に、非常に困難」な状況にあると指摘した。道路や橋、水力発電ダムが破壊されたため、国連はヘリコプターや貨物ドローンの活用に加え、山岳地帯の荷運び人(ポーター)の投入も検討している。ネパール外務省報道官のロク・バハドゥル・ポウデル・チェトリ氏は、大型ドローンや仮設橋、遺体袋、DNA検査キットに加え、移動式航空管制システムと広帯域地震計の必要性を訴えた。
救助活動にはネパール軍など2万1000人以上の要員が投入され、インド、中国、韓国からの専門家も参加している。水力発電所のトンネル内に閉じ込められた作業員の救出が続いているが、これまでに生存が確認された者はいない。一方、カトマンズでは身元不明の遺体が仮埋葬され、家族らがDNA鑑定による身元特定を待っている。ヒンドゥー教の伝統に従い、遺体が見つからない家族がクシャ草で作った人形を火葬する「象徴的な葬儀」も各地で行われた。
ネパールのバレンドラ・シャー首相は、生存者の捜索を続けながら復旧・再建作業を開始すると表明した。国家災害リスク削減管理局のダルマ・ラジ・ウプレティ局長によると、約2万戸の住宅再建が必要で、うち7500戸は全壊した。被災コミュニティをより安全な場所へ移転させる計画も進んでいる。国連開発計画(UNDP)は、洪水と土石流により少なくとも220万トンの瓦礫が発生したと推定している。
今回の災害は、ヒマラヤ地域の予測困難な山岳災害の脅威を浮き彫りにした。国際山岳総合開発センター(ICIMOD)の調査では、氷河湖決壊洪水(GLOF)ではなく、標高約5200メートルでの氷岩雪崩が直接の引き金となった可能性が高いとされる。同センターのファルーク・アザム上級寒冷圏専門家は「検知がなく、警報を発する時間もなかった」と述べ、従来型の早期警報システムの限界を指摘した。専門家らは、土地利用計画の強化、インフラの強靭化、地域社会の高所災害への認識向上を求めている。