ネパールと中国チベット自治区の国境地域で8月26日に発生した氷河崩落に伴う大規模洪水と土石流は、8月30日時点で両国合わせて少なくとも797人の死亡が確認され、3,048人が依然として行方不明となっている。ネパール当局は同日、死者数を781人、行方不明者数を2,502人(うち外国人592人)と発表した。中国国営メディアはチベット側で16人の死亡と546人の行方不明を確認しており、これにより全体の犠牲者は800人に迫る。
米地質調査所(USGS)によると、今回の災害はヒマラヤ山脈の氷河が崩落し、氷、岩、土砂、水が混ざった大規模な土石流がトリシュリ川とボテコシ川の水系を襲ったことで発生した。中国の専門家は、ネパール側のリルン峰南斜面の氷河が破砕し、氷と岩石の雪崩が発生したと指摘している。土石流はネパール側から中国のギリョン国境検問所まで6〜7分で到達したとされ、監視カメラには建物を飲み込む濁流の映像が捉えられた。
ネパールでは現在も救助活動が続いており、約19,000人の軍・警察要員と16機のヘリコプターが投入されている。これまでに8,730人が救出された一方、ヌワコット県とラスワ県の水力発電所トンネルでは、作業員らが閉じ込められている可能性があり、ネパール軍と警察の合同チーム82人がトンネル入口の掘削と捜索を進めている。ネパール当局の行方不明者リストには水力発電プロジェクト関連の作業員933人が含まれており、100人以上がトンネル内に閉じ込められている可能性が指摘されている。
また、ネパールでは遺体の腐敗が進んでいることから、当局はDNAサンプルを採取した上で身元不明遺体の仮埋葬を開始した。ネパール外務省のアムリット・バハドゥル・ライ外務次官は、遺体の保存には1,000台以上の冷凍庫が必要だと述べ、国際社会に支援を要請した。さらに、ネパールのシシル・カナル外相は、再建費用が数十億ドルに上る可能性があると述べ、重い荷物を運べるドローンやDNA鑑定キット、遺体保存用の冷凍庫などの専門的支援を求めた。
国際社会からの支援も相次いでいる。米国とカナダはそれぞれ約360万ドルの人道支援を表明し、英国は680万ドル、国連は250万ドルの緊急資金を拠出した。欧州連合(EU)は230万ドルを約束し、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は100万ドル以上を配分するとともに3,100万ドルの緊急アピールを発出した。インドは捜索救助専門家チームとDNA分析用の法医学専門家を含む約11トンの物資を載せた4便目の支援機をカトマンズに派遣した。マレーシアも捜索救助専門家チームの派遣と100万ドルの支援を表明している。
一方、中国側では、ギリョン国境検問所付近で新たな地滑りが発生し、堰き止め湖が形成されたため、救助隊員が安全な場所に移動する事態となった。中国当局は監視ドローンと衛星、レーダーを用いて湖の状況を継続的に監視しており、状況が悪化した場合には救助隊員に約30分前の警告が可能だとしている。中国はこれまでに2,100人以上の救助隊員を投入し、2億2,000万元(約3,270万ドル)を救援活動に充てている。また、習近平国家主席は救助活動を指揮し、李克強首相を被災地に派遣した。
今回の災害は、気候変動による氷河の不安定化が原因とされている。中国の科学者らは、地球温暖化の長期的な影響による氷河の不安定化が土石流を引き起こしたと指摘している。ヒマラヤ地域は世界平均の2倍の速度で温暖化が進行しており、氷河の融解と山体の不安定化が進んでいる。赤十字はネパール国内で約9万人が被災したと推定しており、今後のさらなる洪水や感染症の拡大が懸念されている。