元ウィンブルドン決勝進出者のオーストラリア人テニス選手ニック・キリオス(31歳)が、コカインの陽性反応を示したため、暫定的な出場停止処分を受けた。国際テニス公正機関(ITIA)が8月19日に発表したところによると、キリオスは6月22日にスペイン・マヨルカ島で開催されたATP 250大会中に提供したサンプルから、コカインの代謝物であるベンゾイルエクゴニンが検出された。世界アンチ・ドーピング機関(WADA)認定ラボが7月17日に陽性を確認し、8月4日から暫定出場停止が発効している。キリオスはこの決定に対して上訴を行っておらず、インスタグラムで「大きな過ちを犯した。全責任を負う」と述べ、ファンや家族、スポンサー、そして自分を追う子供たちに謝罪した。
キリオスは2016年に世界ランク13位を記録し、ATPツアーで7つのシングルスタイトルを獲得。2022年のウィンブルドン決勝ではノバク・ジョコビッチに4セットで敗れた。しかし、その後は肘、手首、股関節、膝、肩、鎖骨などの負傷に悩まされ、現在のランクは919位にまで落ち込んでいる。2024年には右手首の完全再建手術を受けるなど、度重なる手術を経験。キリオスは「ここ数年、負傷が身体的にも精神的にも大きな代償を強いてきた」「自分の体が心の期待に応えられず、キャリアの終わりが近づいていることを受け入れるのは想像以上に困難だった」と語った。その上で「何があっても自分の行動を正当化できない」と述べ、今回の陽性反応を「目を覚ますきっかけ」と捉え、今後28日間はソーシャルメディアと公の場から離れ、「自分を立て直す」と宣言した。
ITIAは、キリオスが暫定出場停止中は、ワールドテニス、WTA、ATP、グランドスラム、各国テニス協会が主催・承認する大会への出場、コーチング、出席が一切認められないとしている。今後の独立した審判所による審理で、最大4年間の出場停止処分が科される可能性がある。キリオスはこれまで、ヤニック・シナーやイガ・シフィオンテクのドーピング事件に対する扱いを「不公平だ」と批判してきたが、今回自身が同様の立場に立つこととなった。彼のキャリアはこの危機を乗り越えられるかどうか、大きな岐路に立たされている。