ヨルダン川西岸のクスラ村で、イスラエル人入植者がパレスチナ人家族の住宅を包囲し、水と電気を断つ事件が発生した。米国のマイク・ハッカビー駐イスラエル大使はこれを「恐怖行為」と異例の強硬な非難を行い、イスラエル軍・警察が米大使館の要請で行動したと明らかにした。一方、イスラエル軍は同日、西岸北部のガニム入植地を再開し、入植拡大路線を鮮明にした。
包囲は日曜日から始まり、クスラ村郊外の3軒のパレスチナ人家屋に対し、入植者らが道路を封鎖し、テントを設置して立ち退きを迫った。住民は食料や医薬品の不足に加え、水と電気も断たれたと訴える。国連は約15人のパレスチナ人(子ども2人を含む)が「恐怖状態」に置かれていると声明を発表した。
ハッカビー大使はX(旧ツイッター)で「この恐ろしいテロ行為を実行した者たちの行動は嫌悪すべきだ」「いじめのような行動に言い訳はない」と述べ、イスラエル軍と警察が米国の要請で入植者を排除するために出動したと説明した。大使は長年入植運動を支持してきたことで知られるが、今回の異例の批判は、トランプ政権内で西岸の「無秩序状態」への不満が高まっていることを示すものだ。
イスラエル軍は木曜未明に再出動し、クスラ村と隣接するジャルード村の「違法な前哨拠点」2か所を解体し、イスラエル人1人を拘束した。しかし、入植者らは付近の丘に残っており、住民は依然として包囲状態にある。クスラ村のアブデル・アジム・ワディ村長によれば、軍は包囲されたパレスチナ人家屋に一時的な退去命令を出したという。
この事件は、ネタニヤフ政権下で加速する入植地拡大政策と、入植者による暴力の急増を浮き彫りにした。パレスチナ人は、イスラエル軍が入植者の土地強奪を黙認していると非難する。国際法上、西岸の入植地は違法とされており、50万人以上のイスラエル人が約300万人のパレスチナ人と共存する地域に住んでいる。
一方、イスラエル政府は同日、2005年の撤退計画で解体されたガニム入植地を公式に再開した。イスラエル・カッツ国防相は式典で「ここはイスラエルの地だ。我々は永遠に留まる」と述べ、入植拡大の方針を強調した。ガニムは、同政府のもとで再建された4つの解体入植地のうちの1つであり、10月27日の選挙を控えたネタニヤフ首相が強硬派支持層に訴える動きとみられる。
今回の一連の出来事は、イスラエル国内の政治対立と国際社会の非難を深めるものであり、中東和平プロセスにさらなる影を落とすものとなる。米国の異例の批判は、イスラエル政府の対応に変化を迫る可能性があるが、入植地拡大の流れを止めるには至っていない。