サウジアラビア、トルコ、パキスタンの3カ国は8月7日、聖地メッカで「メッカ共同防衛協定」に調印した。イラン紛争を背景に、スンニ派主要国による正式な軍事同盟が初めて結ばれた。パキスタン外務省の声明によれば、3カ国のいずれかに対する攻撃は全加盟国への攻撃とみなされる。調印式には、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子兼首相、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、パキスタンのシェバズ・シャリフ首相が出席した。
この協定は、2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃して以来、イランとその同盟勢力がサウジアラビアを含む湾岸諸国への攻撃やエネルギー輸送の封鎖を続ける中で締結された。サウジアラビアは、イラクのシーア派民兵やイエメンのフーシ派による攻撃に直面しており、米国の安全保障への信頼が揺らぐ中で、防衛協力の多角化を模索してきた。トルコはNATOで2番目の規模の常備軍を持ち、パキスタンはイスラム圏で唯一の核保有国、サウジアラビアはメッカとメディナの管理者であり、イスラム圏の中心的存在である。
協定は、昨年9月に締結されたパキスタンとサウジアラビア間の防衛協定を拡大したもので、トルコが加わる形となった。サウジアラビアのレイェド・クリムリー公共外交次官は、この協定が「軍事軸や宗派ブロックの形成を意図するものではなく、地域のいかなる国の安全に対する脅威にもならない」とX(旧ツイッター)に投稿した。一方、トルコ政府は協定が「特定の国を標的にしたものではない」と強調したが、アナリストらは、この協定がイランの影響力に対抗することを主な目的としているとみている。
調印に先立ち、サウジアラビアの高官は、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の監督下で、イラクの民兵とイエメンのフーシ派による協調攻撃が差し迫っているとの見方を示した。エネルギーインフラや港湾、空港などが標的になる可能性があると警告した。また、フーシ派は8月6日、イエメンのマリブ県とハドラマウト県でサウジアラビアが支援する政府軍を攻撃し、少なくとも58人の兵士が死亡した。さらに、サウジアラビア南部のナジュラーン県への攻撃で民間人11人が負傷した。
この協定は、中東の安全保障体制が米国中心から地域主導へと移行する兆しを示すものだ。キングス・カレッジ・ロンドンのアンドレアス・クリーグ氏は、「サウジアラビア、トルコ、パキスタンは米国に取って代わろうとしているのではなく、ワシントンが対応できない、あるいは対応しない場合に自国の利益を守る能力を構築している」と指摘する。一方、イスラエルは、トルコとの関係悪化もあり、この協定を脅威と受け止める可能性がある。イスラエルの国家安全保障研究所のガリア・リンデンシュトラウス氏は、「イスラエルにとって非常に憂慮すべき展開だ」と述べた。