イランとオマーンは5日、戦略的に重要なホルムズ海峡を通過する船舶の航行ルートに関する地理座標で合意に達し、共同声明の最終調整段階にあると発表した。イラン外務省報道官のエスマーイル・バガエー氏は、特定の第三者が過程を妨害しない限り、両国の主な考慮事項と合意点を盛り込んだ声明が起草中であると明らかにした。2月28日に米国とイスラエルがイランに対して軍事行動を開始して以来、事実上封鎖されていた同海峡の航行再開に向けた外交努力が、両国間の二国間協議として本格化している。
合意の骨子は、イランが海峡を通過して湾岸地域へ進入する船舶の管理権を掌握し、オマーン側との協調により航行安全を確保する暫定的な枠組みを構築することにある。報道によると、この取り決めは当初60日間のみ有効とされ、航行手数料の徴収は行わない一方、海洋環境保護や警備サービスに関連する費用の負担が議論されている。イラン側は入港船舶の制御を主張する一方、米国側は海峡の完全な自由航行と手数料徴収の禁止を要求しており、両者の立場は依然として隔たりがある。バガエー氏は、米国の海軍封鎖や脅し行動が海峡の安全を脅かす主要因であり、合意が直ちに航行再開を意味しないとも強調した。
米国側はトランプ大統領が交渉の進捗を評価しつつも、合意が成立しない場合はイランに「非常に強い打撃」を加えると警告を続けている。ルビオ国務長官も進展があるものの最終段階ではないと指摘。米軍の弾薬在庫が逼迫していることや、11月の中間選挙を控えた世論の圧力も、外交決着を急ぐ背景にある。一方、イエメンのフーシ派が紅海でサウジ船籍のタンカーを攻撃するなど地域情勢は依然として緊迫しており、エジプトのシーシ大統領とギリシャのミツォタキス首相は電話会談で、緊張緩和と地域紛争の拡大防止に向けた包括的な米イラン合意を支持する姿勢を示した。
この暫定合意が実現すれば、世界石油・LNG輸出の約2割を占める同海峡の商業航行が再開され、エネルギー価格の安定化につながる可能性がある。しかし、米国の対イラン制裁解除や封鎖撤廃が先行条件となるほか、長期的な海峡管理権の帰属や核問題を含む広範な外交協議への道を開くかどうかは不透明だ。イラン側は米国の行動変容を前提に協議を継続しており、海峡の支配権を巡る地政学的バランスの再編が、中東の将来を左右する鍵となることが見通されている。