2026年7月、米中両国の戦略的競争が人工知能(AI)技術分野と印太平洋地域の海洋安全保障の両面で激化している。ASEAN外相会議を機にフィリピンと中国間の南シナ海での衝突や、日本排他的経済水域(EEZ)での実弾演習が表面化する中、米国は中国の海洋活動とAI覇権の両面に対して強い圧力をかけつつある。中国側もオープンソースAIの推進や海洋権益の防衛を掲げ、米国の包囲網に対抗する姿勢を明確にしている。
AI分野では、米国の半導体輸出管理措置にもかかわらず、中国のモデル開発格差が急速に縮小している。中国の習近平国家主席は上海で開催された世界AI会議(WAIC)で基調演説を行い、「オープンソース」や「包括的AI」を推進する姿勢を示した。米国の技術優位が相対的に低下する中、中国はグローバルサウス向けにAIインフラとモデルの普及を加速させており、米国の輸出統制は自国企業の研究開発やサプライチェーンにも影響を与えているとの指摘がある。中国はWAICO(世界AI協力機関)を設立し、29カ国が加盟する中でAIガバナンスのルール形成を主導している。一方、中国の研究者らは、東シナ海、台湾海峡、南シナ海の三海域で米国が圧力をかけていることに対し、外交・軍事・法執行などの分野で統一対応する省庁横断的なメカニズムの構築を求めている。
海洋面では、南シナ海・第2トーマス礁付近で中国海警局とフィリピン海軍の衝突が発生し、フィリピン側兵士が負傷した。両国は相互に外交ルートで抗議し、関係者の召還を行った。米国務長官マーコ・ルビオとオーストラリアの外相ペニー・ウォンはASEAN会議に合わせフィリピンを訪問し、中国の行動を「危険かつ攻撃的」と非難した。ルビオは論説で東南アジアの航行の自由が保証されていないと警告し、中国の海洋進出を牽制した。また、日本側も沖縄県沖のEEZ内で中国とロシアの艦艇による実弾演習を確認し、内閣官房長官の木原稔氏を通じて抗議を行った。中国外交部報道官の林建氏は日本のEEZ主張を否定し、国際法に則った活動と主張している。欧州も中国を「長期的な戦略的課題」と位置づける新たな立場文書を承認し、EU外交上級代表のカジャ・カラス氏は安全保障戦略に位置づける方針を示した。米財務長官スコット・ベッセント氏は、中国によるイランの石油購入が大幅に減少したと明らかにしている。
米中両国のAI・技術覇権競争と印太地域の海洋緊張が相互に連動する中、各国はサプライチェーンの強靭化と安全保障の確保を迫られている。今後、AIガバナンスのルール形成と海洋秩序の維持が、国際的な協調と対立の両面で重要な争点となる見通しだ。特に、中国が提供するAI公共財と海洋権益の防衛策が、グローバルサウスや近隣諸国にどのような影響を与えるかが、今後の国際情勢を左右する鍵となる。