世界保健機関(WHO)のテドロス・アドハノム・ゲブレイェスス事務総長は、民主コンゴにおけるエボラ出血熱の流行が対策の追いつく速度を上回っていると警告し、緊急対応の大幅な強化を呼びかけた。同国ではバンドゥブギョ株による流行が急拡大し、確認症例は3973件、死者は1801人に達している。感染症対策の最前線に立つ医療従事者の給与未払いを巡るストライキも深刻化しており、国際社会からの追加資金支援とワクチン開発の加速が求められている。
同国保健省のボディ・イロンガ・ボンポコ事務総長によれば、首都キンシャサ近郊で航行中の河川船内でエボラ疑いのある患者の死亡が確認され、300人以上の乗客に対するスクリーニングと隔離措置が取られた。流行は東部のイトゥリ州を中心に拡大しており、全症例の約90%が同地域で報告されている。アフリカ疾病管理センター(Africa CDC)のジャン・カセヤ長官は、接触者追跡が機能していない実態を指摘し、ザイール株由来のワクチンがバンドゥブギョ株に対し一定の軽症化効果を示す初期データがあるため、接種戦略の拡大を検討していると明らかにした。また、モデルナやオックスフォード大学、ヒレマン・ラボラトリーズが開発中の新ワクチンや治療薬の臨床試験も開始されている。
一方で、最前線の医療従事者の間で給与未払いを理由としたストライキが深刻化している。感染防止・制御チームのメンバーであるウィザ・ボンデレ氏らは、危険な作業環境の中で週7日勤務を強いられながら、約束された手当が支払われない実態を訴えている。イトゥリ州の首都ブニアでは、医療機関の職員らが知事官邸前で抗議活動を行い、迅速な解決を求めている。ストライキにより医療アクセスが阻害される中、遠隔地や武装衝突地域からの新規症例が急増し、流行の制御は難航している。
国際社会は危機対応の強化に向け、米国務省が2億4200万ドルの追加資金提供を表明するなど支援を加速させている。WHOは医療従事者の保護と訓練、心理的支援を最優先課題として掲げ、国境を越えた連携の強化を求めている。流行が記録上2番目の規模に達し、死亡率も高い現状において、医療体制の安定とワクチン・治療法の早期普及が、地域社会の安全と国際的な公衆衛生の維持に不可欠となる。