2026年10月10日、トランプ米大統領とプーチン露大統領の間で約90分にわたる電話会談が行われ、ロシア産ディーゼルの対米・対世界市場への供給と、これに伴う米国の対露制裁一時停止に関する合意が成立した。トランプは同日、ホワイトハウス前で記者団に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領を「戦争を終わらせる機会を繰り返し拒んできた」と非難し、「ウクライナには新たな大統領が必要だ」と公然と要求した。この一連の動きは、マイアミで進行中だった米・ウクライナ・欧州間の戦争終結交渉を事実上崩壊させ、キエフ側から「同盟国による裏切り」と呼ぶ強い反発を招いた。
取引の内容は以下の通りである。ロシアは直ちに30万トン以上のディーゼルを供給し、11月にさらに50万トン、その後直ちに100万トン、短期間でさらに300万トンを追加供給する。米財務省外国資産管理局(OFAC)は、ロシア産ディーゼルの販売・輸送・輸入を2027年4月7日までに限定して認める一時許可を発出した。トランプは、ウクライナの製油所攻撃が世界的なディーゼル不足を招いていると非難し、「ロシアに何をやってもいいが、製油所を攻撃するな」とゼレンスキーに警告した。しかし、アルジャジーラは、世界的な燃料価格高騰の根本原因が2026年2月に米・イスラエルが開始した対イラン戦争にあると指摘し、ホルムズ海峡の事実上の封鎖や紅海・バブ・エル・マンデブ海峡でのフーシ派の攻撃が供給混乱を深刻化させていたと報じた。さらにアルジャジーラは、ロシア自体が燃料不足に直面しており、取引で約束された供給量が実現するかどうか懐疑的な見方を伝えた。
各メディアの報じ方には明確な差異が認められた。一致して報じられていた根幹的事実としては、①トランプとプーチンの電話会談が約90分間行われ、クレムリンのウシャコフ外務担当補佐官が「非常に実質的で友好的な」会話だったと記述した点、②ディーゼル供給量の数値、③OFACの一時許可が2027年4月7日まで有効であった点、④ロシアがザポリージャに滑空爆弾5発を投下した点を共通して確認できた。一方で、見解が割れた点は以下の通りである。中国のSCMPは、トランプが主張した「ウクライナの30%が失われた」という数字に対し、独立系の推計では約20%にとどまるとの事実を併記した。また、トランプが「200万人以上が死亡した」と語った点について、SCMPは英国防省が約50万人のロシア兵の死亡を確認しているものの、ウクライナ側の死者数に関する信頼できる推計はないと報じた。ウクライナのキーウ・インディペンデントは、マイアミでの交渉が「罠だった」とする匿名のウクライナ高官の証言を掲載し、米側がウクライナに対し、ロシア製油所への攻撃を停止しなければ対露攻撃に必要な米軍情報共有を停止すると脅したと伝えた。アルゼンチンのクラリンは、トランプのゼレンスキー批判と、ロシアのキリル・ドミトリエフ大統領特使が「ゼレンスキーの好戦主義」を非難してトランプの発言を歓迎した点を対比して報じた。ドイツのドイチェ・ヴェレは、独政府が対露制裁路線を維持する姿勢を示した一方、元首相ゲルハルト・シュレーダーがモスクウでプーチンの74歳の誕生日を祝ったとして独国内で批判が高まっていることに言及した。
合意発表から数時間後、ロシアはウクライナ南東部ザポリージャに5発の滑空爆弾を投下し、住宅を直撃した。死者数については報道により幅があり、当初は15人と報じられたが、その後19人から20人に増加したと伝えられた。犠牲者には3人の子どもが含まれていた。キーウでは同日午後、ミサイル攻撃によりレストランが被弾し、7人が負傷した。ウクライナ全土では直近数日間で80人超の民間人が殺害されており、キーウでは地下鉄が全面停止に追い込まれた。プーチンはトランプとの電話会談後、ウクライナのモスクワへのドローン攻撃を理由に「3者間和平交渉の即時再開は困難だ」と述べた。ウクライナはこれに対し、ロシア南部ロストフ州ノヴォシャフチンスクの石油積出ターミナルをドローンで攻撃し、鉄道交通が全方向で停止した。
欧州側の反応は厳しかった。EU外交安全保障上級のカヤ・カラスは「ロシア産ディーゼルへの制裁停止はモスクウに戦争遂行のための追加収入を与えるものだ」とX上で断じ、「欧州は圧力を緩和しない」と明言した。EUは月曜日に、戦争開始以来最大規模の対露制裁リストの承認を予定していた。独政府のシュテファン・コルネリウス報道官は「連邦政府は対露制裁維持にコミットしており、欧州パートナーと追加制裁を検討している」と述べた。英首相アンディ・バーナムはゼレンスキーとの電話会談で対露制裁の強化を約束し、エネルギー分野での停戦を提唱した。ゼレンスキーはX上で「今日、ロシアはディーゼル輸出制裁の解除に対する『お礼』として、ザポリージャの住宅に5発の滑空爆弾を落とした」と書き込み、トランプの和平交渉を「煙幕(スモークスクリーン)」と非難した。
この一連の出来事は、ウクライナ戦争の外交構造に根本的な亀裂を生じさせた。トランプが今年9月に署名した対露包括制裁法がエネルギー部門の封じ込めを目的としていたのに対し、今回のディーゼル取引はその法的枠組みを事実上迂回するものであった。キーウ・インディペンデントは、マイアミでの交渉が「エネルギー停戦」の枠組みを模索する場であったにもかかわらず、トランプが一方的にロシアに経済的猶予を与えたことが「エネルギー停戦構想を葬り去った」と報じた。アルジャジーラは、G7が1億バレルの緊急備蓄放出で合意したものの、一時的な解決策に過ぎないとの専門家の見方を伝えた。ゼレンスキーは、ウクライナがF-16戦闘機用の弾薬を近日中に受け取る予定であると表明した。トランプの「新大統領」要求に対し、ウクライナ憲法は戦時下の選挙を禁じており、現実的な権力交代の道は閉ざされていた。