ドイツ経済研究所(Institut der deutschen Wirtschaft, IW)のシニアリサーチャー、マイケル・グレムリング氏は、2026年に入ってから続くイラン戦争と高騰するエネルギー価格が、ドイツ企業の業績と投資意欲を大幅に後退させていると警告した。IWが実施した1,000社規模の企業調査(産業・サービス・建設部門)によると、回答企業の43%が「前年同期比で業績が悪化」と回答し、改善を見込む企業はわずか14%にとどまった。
調査は2026年3月に実施され、イラン戦争が勃発した直後のデータを反映している。企業の投資意欲は顕著に低下し、全体の40%が新規投資の凍結または縮小を計画している。また、産業部門では37%、サービス部門では28%の企業が人員削減を検討しているが、逆に増員を検討している企業はそれぞれ14%、22%にとどまる。
グレムリング氏は「2020年のコロナショック、2022年のウクライナ戦争によるエネルギー危機、そして今年のイラン戦争と、ドイツ経済は過去30年で最も連続した外部ショックに直面している」と指摘した。過去に類似した長期危機は、2000〜2005年のドットコムバブル崩壊と原油価格急騰、さらに2001年の同時多発テロが重なった時期であるという。あの時期に実施された「アジェンダ2010」的な労働市場の柔軟化と官僚主義の削減が経済回復に寄与したが、現在は同様の構造改革が急務とされている。
特に、企業が抱える「官僚コスト」の増大が指摘されており、過剰なコンプライアンス対応や法的助言費用が利益率を圧迫している。グレムリング氏は「官僚主義の削減は、企業の競争力回復に不可欠だ」と述べ、具体策としては規制緩和とデジタル化支援の拡充を提案している。
このような厳しい経済環況は、失業率の上昇リスクやインフレ圧力の持続化を招く恐れがある。政府は既にエネルギー価格抑制策や中小企業支援策を講じているが、グレムリング氏は「短期的な支援だけでは根本的な回復は期待できない。構造改革と産業のデジタルトランスフォーメーションが不可欠だ」と警鐘を鳴らした。