米特使スティーブ・ウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏が6月30日、カタールのドーハに到着し、中東和平に向けた米イラン間の協議を調整した。カタール外務省とイラン外務省は、両国間の直接会談や高位レベルの協議は計画されていないと明言し、米側が「高位レベルの会談」を行うと主張したドナルド・トランプ大統領の発言とは対照的な状況となっている。今回の協議は、6月17日に締結された暫定合意(覚書)の履行プロセスに集中しており、特にホルムズ海峡の航行管理権と、カタールに凍結されている60億ドルのイラン資産の解放が最大の争点となっている。
イラン外務省報道官のイスマイール・バグエイ氏とカタール外務省報道官のマジェド・アル・アンサリ氏は、イランが技術者チームをドーハに派遣するのは合意履行に関する議論のためであり、米側との交渉ではないと強調した。イラン側は、米側が合意条項を完全に履行するまで最終合意の交渉は開始しないとの方針を維持している。特にホルムズ海峡については、イランが航行管理権を主張するのに対し、米側は自由な航行を要求し、両者の解釈の相違から週末にかけての軍事衝突に発展した経緯がある。また、イランはレバノン南部からのイスラエル軍撤退とヒズボラ関連の戦闘停止を合意履行の前提条件としており、レバノン議会議員のナビー・ベリー氏も米国仲介の枠組み合意に懐疑的な見解を示している。
外交プロセスの脆さが市場に与える影響は既に顕在化している。停戦交渉の進展により中東緊張が緩和されたことで原油価格は下落し、2020年以来最大の四半期下落が予測されている。欧州ではユーロリボルが欧州中央銀行の利上げ期待とドル高を背景に横ばいを続け、住宅ローン負担の軽減にはつながらない状況だ。一方、台湾電力は天然ガス価格の引き下げを発表し、中東情勢の緩和がエネルギー価格に直接的な効果をもたらしている。湾岸各国は安全保障の米国の信頼性に疑問を抱き始めており、米中間接協議の成否が、ホルムズ海峡を介した全球エネルギー供給の安定化と、11月米中間選挙を前にしたトランプ政権の政治的圧力緩和に直結する。