FIFAのジャンニ・インファティーノ会長が、ワールドカップの商業部門を巡る私企業化計画の頓挫を受け、再選に向けて大きな支持回復の危機に直面している。欧州サッカー連盟(UEFA)や北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)、アジアサッカー連盟(AFC)など主要大陸連盟が支持を撤回し、イングランドやスウェーデン、ウェールズなどの各国サッカー協会が相次いで再選支持表明を取り消す事態となっている。
計画はFIFAの商業部門を独立子会社「FIFAフォワードエンタープライズ(FFE)」として分割し、約20%の株式を民間投資家に売却して42億ドルの資金調達を図るものであった。ニューヨークの投資会社スライブ・キャピタル(スライブ・エターナル)が関与し、同社代表のジョシュア・カッシャー氏が米大統領ドナルド・トランプ氏の娘婿ジェレッド・カッシャー氏の義理の弟であることが露見した。この計画はUEFA、CONCACAF、AFCの強い反発を招き、UEFAは全FIFA主催大会のボイコットを警告。計画は発表から数日後に撤回されたが、インファティーノ会長のリーダーシップに対する信頼は大きく損なわれた。UEFAは訴訟保全のための文書保存命令書を送付し、代替候補の模索も始まっている。また、FIFAグローバルサッカー開発責任者のアルセーヌ・ヴェンガー氏は関与を否定し、計画撤回は「絶対的に必要だった」と表明。最高経営責任者のケヴィン・ラモア氏も計画が「一人のプロジェクト」であったと批判し、カルロス・コルデイロ氏は辞任している。
一方、ワールドカップを巡る各国の動向も多岐にわたる。米国サッカー連盟は、ワールドカップで初勝利を挙げ16強に進出したマウリシオ・ポチェティノ監督との契約を2030年ワールドカップまで延長すると発表した。南アフリカでは、ゲイトン・マッケンジースポーツ・芸術・文化相が議会から、ワールドカップ観戦団の3100万ランド超の支出について説明を求められている。与党側は正当な支出と反論する一方、野党からは透明性と説明責任の欠如を指摘する声が強い。また、2027年クリケット・ワールドカップの共催国であるナミビアは、フルメンバー資格を持たないため予選突破が必須であり、現在5位で予選圏外に置かれているため、本大会出場が危ぶまれている。
次期FIFA会長選挙の立候補受付期限は2026年11月18日、本選挙は2027年3月にモロッコで開催される予定だ。43以上の加盟協会が特別国会の開催を請求できる規定があるため、インファティーノ会長の去就は短期的な政治力学に左右される。ワールドカップ成功の余韻と商業展開の夢が、組織統治の透明性と民主的な手続きを巡る対立に取って代わられ、国際スポーツのガバナンスの在り方が問われている。