イギリスのキアー・スターマー首相は22日、10番街の官邸前で辞意を表明し、労働党党首および首相職を退任する意向を示した。スターマー氏は政権発足から2年足らずで退陣に追い込まれ、英国はブレクジット以降、10年間で7人目の首相を迎えることとなる。後継の筆頭候補は、先週行われたMakerfield補欠選挙で勝利し議席に返り咲いたアンディ・バーナム元大マンチェスター市長と見られている。
辞任の背景には、党内からの強い退陣要求があった。5月の地方・地域選挙で労働党が大幅に議席を減らし、ナイジェル・ファラージ党首率いるリフォーマムUKや緑の党への支持が拡大。ジョン・ヒーリー国防相やウェス・ストリーティング前保健相が相次いで辞任し、政権基盤が揺らいだ。ストリーティング氏は22日、バーナム氏を支持する方針を表明し、正式な党首選対立を回避する方向だ。党規則では7月9日に候補届け出が開かれ、16日までに完了する見込みで、争いがなければバーナム氏は7月中旬にも首相に就任する可能性がある。
首相交代の動静は金融市場にも影響を与えている。政府債の利回りは不透明感から変動し、ポンドの値動きも鈍っている。経済界からはバーナム新首相の財政政策や増税・公共投資拡大への懸念が示されており、化学工業協会や英国産業連盟(CBI)は成長戦略と政策の安定性を求めている。市場関係者は、新財務相の指名や財政ルールの扱いが市場信頼の鍵となると指摘している。
国際的には、欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長やウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領からスターマー氏の対ウクライナ支援や安全保障への貢献が評価された。一方、米国のドナルド・トランプ大統領は情報サイト上で移民政策やエネルギー政策、イラン情勢への対応を批判し、辞任を歓迎する立場を示した。EUと英国の首脳会談も延期される見込みだ。
スターマー氏の退陣は、英国政治の長期的な不安定さを浮き彫りにしている。バーナム氏が政権を握れば、地域格差是正や公共サービスの強化を掲げる「マンチェスター流」の政策展開が期待される半面、財政制約や野党の台頭という課題は依然として残る。英国は新政権の下で、政治的整合性と経済成長の両立を急ぐことになる。