オーストラリアの元特殊部隊員でヴィクトリア十字章受章者のロバーツ=スミス氏(以下ロバーツ氏)が、シドニー・ダウニング・センター地方裁判所で保釈を認められた。ロバーツ氏は、2009年から2012年にかけてアフガニスタンで無防備なアフガニ人5名を殺害したとして、戦争犯罪(殺人)容疑で起訴されている。
裁判官のグレッグ・グロギン氏は、検察側がロバーツ氏を逃亡の危険があると主張したにもかかわらず、保釈を許可した。裁判所は、オーストラリア連邦警察と特別捜査官事務局が作成した「事実の声明」をメディアに公開し、同氏が関与したとされる具体的な行為を明らかにした。
主な容疑は以下の通りである。ロバーツ氏は、2012年10月にシアチョウで捕虜とされた2名の「管理下の人物」(PUC)を射殺する際、別の兵士に「撃て」と指示したとされる。また、同事件でロバーツ氏は手錠を外し、盲目状態の被害者を地面に押し倒した上で、手榴弾を投げて爆発させたとされる。さらに、同年に「ウイスキー108」と呼ばれる複合施設を空爆後に確保した際、捕虜のモハメド・エッサとアフマドゥラを捕らえ、エッサを膝に乗せて別の兵士に「撃て」と指示し、結果としてエッサは頭部射殺された。
加えて、ロバーツ氏は捕虜のアリ・ジャンを崖から約10メートル下に転落させ、足を負傷させた後、別の兵士に射殺を指示したとされる。これらの行為は、オーストラリア軍が定める交戦規則に違反し、戦争犯罪として起訴される根拠となっている。
ロバーツ氏は、すべての容疑を否認し、過去の名誉毀損訴訟において「交戦規則を完全に遵守した」と主張しているが、裁判所は民事上の「優越的証拠」の基準に基づき、被告の主張に対し疑義を呈している。現在、ロバーツ氏は保釈中であり、次回公判は2026年7月に予定されている。
この事件は、オーストラリア軍の国際的な信頼性と、戦争犯罪に対する国内外の法的枠組みへの注目を集めている。もし有罪判決が下されれば、オーストラリア軍の指揮系統や訓練方針に対する改革が求められる可能性が高く、また、戦争犯罪に関わる兵士への法的責任の範囲が再評価されることが予想される。