米国防総省(ペンタゴン)は2026年10月8日、テキサス州フォートフッド基地で2009年に13人を殺害した元陸軍精神科医ニダル・ハサン容疑者(56歳)に対する銃殺刑の処刑を、12月3日に生中継で配信すると発表した。米国で軍による死刑執行が行われるのは1961年以来65年ぶりであり、銃殺刑による執行は1945年以来初めてとなる。国防長官ピート・ヘグセスが「公開する」と表明した数日後に、ペンタゴン当局が生中継を正式に確認した。この決定は、テネシー州で9月30日に発生したクリスタ・パイク被告の失敗した致死注射事件の直後に発表され、米国内で死刑執行方法の是非をめぐる議論に新たな火種を投げかけた。
ハサン容疑者は2009年11月5日、フォートフッド基地内の医療施設でレーザー照準付き拳銃を発砲し、13人を殺害、32人に重軽傷を負わせた。うち12人の死者と30人の負傷者は軍人であった。逮捕時に民間警察官の銃撃を受け、下半身不随となり車椅子生活を余儀なくされている。2013年8月に軍事陪審により予謀殺人および予謀殺人未遂の45件の罪で死刑判決を受けた。トランプ大統領がヘグセス国防長官の勧告を受け、処刑を承認した。ヘグセスは処刑場所と日時について「フォートフッドで、木曜日の午後1時、つまり彼が犯行を行った時刻と同一条件で行うのは当然の判断だ」と述べた。ホワイトハウスは生中継へのトランプ大統領の支持について言及を避け、質問をペンタゴンに回した。
一方、テネシー州では10月8日時点で、クリスタ・パイク被告(50歳)が失敗した致死注射の後に肺炎を発症していた。パイク被告は9月30日にペントバルビタルの致死用量2回を投与されたが死亡せず、数日間意識不明の状態が続いた後、10月6日に意識を回復した。弁護士スティーブン・フェレルは「彼女は初めて自力で歩行できるようになったが、部屋の中を歩く程度であり、まだ精神的に『もやがかかった』状態にある」と述べた。弁護士チームは「長期的な影響について不確実性が残っており、一部の損傷は永続的なものになる可能性がある」と警告した。テネシー州のビル・リー知事は事件を受けて同年中の処刑を停止し、独立した第三者調査を命じた。
各国メディアの報じ方には明確な差異が見られた。スペインのエル・パイス紙は、この銃殺刑を「イスラム国のようなテロ組織によりふさわしいように見える慣行」と比較し、世界人権宣言に署名した国々の政府としては異例の措置であると論じた。カナダのCBCニュースと米国のNPRは、ヴィラノヴァ大学法学部のブレンナー・フィセル教授の発言を引用し、同教授が「銃殺刑はより迅速で正確な方法になり得るが、今回の動機はそれではない。ヘグセスが強調しようとしている『殺傷力文化』の中に、男性的・軍事的な美学が認められる」と分析した点を報じた。BBCは、死刑執行の公衆視聴について「現代的な前例がない」とし、法律専門家ジョン・ミルズが「グロテスクな見世物として設計されている」と批判的に論じた点を伝えた。カタールのアルジャジーラは、致死注射の構造的な失敗パターンに焦点を当て、医療専門家や製薬企業が死刑への関与を拒否する中で、刑務所が資格の疑わしい人員に処刑手続きを委ねざるを得ない実態を報じた。ロイター通信は、法執行機関の専門家らが「生中継は極めて異常だ」と述べたこと、および法的に承認された処刑を生中継・テレビ放送している国は他に知られていないことを伝えた。
法的観点からは、ハサン容疑者が連邦裁判所に人身保護令状(habeas petition)を提出して処刑の延期を追求する可能性が指摘されている。イェール大学法学部の軍事法専門家ユージン・フィデルは「この手続きは現政権の任期を長らえる可能性すらある」と述べた。また、米軍法では銃殺刑の実施に大統領の承認が不可欠であるが、上訴手続きが未了である場合があり、処刑が実際に実施されるかどうかは依然として不透明である。テネシー州の事件とフォートフッドでの処刑計画の双方が、米国内で死刑執行方法の信頼性に対する根本的な疑問を提起しており、致死注射が依然として最も一般的な執行方法である一方で、その失敗率が他の方法を大きく上回っているという事実が改めて注目されている。