米イラン間の軍事衝突が再燃し、ホルムズ海峡の通行阻害が深刻化している。これにより国際原油価格が1バレル100ドル台を回復する一方、肥料・食料価格の高騰や為替市場への波及、さらには米国による新関税導入などが重なり、グローバル経済に多面的な圧力をかけている。各国政府や企業はサプライチェーンの再構築と物価抑制に追われている。
南イエメンのフーシ派による紅海でのタンカー攻撃や米国の対イラン空襲を受け、Brent原油は一時100ドルを突破し、週間では約11%上昇した。しかし、一部船舶の通行が維持されたことで市場は一旦落ち着きを取り戻し、米欧株式市場も反発した。一方、米国連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ期待が高まり、10年物米国債利回りは18ヶ月ぶりの高値を記録した。欧州中央銀行(ECB)は据え置きを決定したが、9月の追加利上げの可能性を示唆した。金価格は原油高による利上げ懸念を背景に下落した後、原油価格の反落で回復し、1オンス4000ドル台を維持した。
トランプ米政権は、ホルムズ海峡の通行料20%導入を提案したが、湾岸諸国からの反発を受け撤回。その代わりに、湾岸諸国や欧州への防衛費増額圧力と米軍需品購入を促す安全保障政策を推進している。同時に、59か国およびEUを対象に強制労働関連商品に対する10%および12.5%の新関税を施行し、為替市場ではマレーシア・リンギルがドルに対して小幅下落した。韓国政府は中東緊張を理由に燃料価格の上限を維持し、消費者物価上昇(6月も3%超)を抑制する対応を続けている。
海峡閉鎖の影響はエネルギーに留まらず、グローバルな食料・肥料供給網にも及んでいる。ホルムズ海峡は世界肥料貿易の約20〜30%を占め、通行量が95%減少したことで尿素価格が急騰し、農業生産コストの上昇が食料インフレを加速させている。飲料大手コカ・コーラはインド市場で供給制約を理由にDiet Cokeの価格を10%以上値上げし、缶サイズの変更を余儀なくされた。東南アジアの航空各社も燃料高を背景に長距離路線から地域路線へ戦略をシフトしつつある。
中東紛争は単なる地域紛争ではなく、エネルギー・食料・金融・貿易政策が複合的に絡み合うグローバル・ショックへと発展している。各国中央銀行は成長鈍化とインフレ抑制の間で政策判断を迫られ、企業は調達コスト増とサプライチェーンの分断に対応を強いられている。外交交渉の行方と海峡通行の正常化が、世界経済の安定を左右する最大の鍵となる。