米イランは2026年2月28日に始まった軍事衝突を終結させるための14項目からなる覚書(MOU)を正式に締結した。パキスタンのシャリフ首相が仲介役を務めたこの合意により、イランは直ちにホルムズ海峡の通航を再開し、米国はイラン港湾への海上封鎖を解除する。両国の指導者が署名した同文書は、核プログラムに関する最終合意に向けた60日間の交渉枠組みを設けるとともに、地域諸国による3000億ドル規模の復興資金創設の道筋を示している。
合意後、米国側を率いるヴァンス副大統領はホワイトハウスで記者会見し、交渉の開始を宣言した。しかし、スイス・ブルゲンシュトックで予定されていた初回協議は、交渉手配の複雑さやレバノン南部でのイスラエル軍の継続的な攻撃を理由に延期された。イランの最高指導者モジャッバ・ハメネイは合意を承認したものの、米国側が過度な要求を出せば受け入れないと警告し、対米交渉が容易ではないことを示唆した。ヴァンス副大統領はイスラエルのネタニヤフ首相や閣僚らの批判に対し、「トランプ大統領はイスラエルの唯一の強力な盟友であり、軍事支援の大半は米国の税金で賄われている」と反論し、和平プロセスへの尊重を求めた。
一方、イスラエルは和平合意の枠組みに含まれておらず、南部レバノンからの撤収やヒズボラとの交戦停止に応じる姿勢を示していない。ネタニヤフ首相は「イスラエルの安全保障上の必要性が続く限り、南部に軍事的存在を維持する」と明言し、占領区域の拡大を示す新たな地図を公表した。イラン側も、合意違反やレバノンでの敵対行為に対しては決定的な対応を行うと警告しており、中東地域における緊張の再燃リスクは依然として高い状態にある。
経済面では、戦禍の終結と主要エネルギー輸送路の再開見通しを受け、原油価格が下落し、世界株式市場が反発した。しかし、合意の骨格は核制限やミサイル体制の具体化を先送りしており、共和党内部からは戦略的敗北や過大な譲歩とする批判が噴出している。60日間の交渉期間中に最終合意が成立するか否かが、中東の長期的安定とグローバル経済の回復力を見極める重要な試金石となるだろう。