米国とイランが和平合意に接近しているとの観測が強まっている。米政府高官は合意文書の草案が確定し、数日以内に初期合意が署名される可能性が高いと示した。イランのアーラグチ外相は「合意は過去にないほど近づいた」と述べつつ、最終決定は下されていないと強調し、両者の姿勢には微妙な温度差がある。
草案では、米軍によるイラン港湾封鎖の解除とホルムズ海峡の再開が柱となっている。イランはオマーンと共同で海峡の通航管理権を保持し、通航料の徴収を主張する。核問題は一旦棚上げされ、署名後60日間の交渉で高濃縮ウランの処理やプログラム解体について協議される方向だ。米側は「パフォーマンスベース」の合意とし、イランの履行確認後に凍結資産の解除や制裁緩和を進めるとしている。パキスタンのシャリフ首相が仲介役として最終文書の成立を確認しており、ジュネーブでの署名準備も進んでいる。
イスラエルは交渉の当事者ではない。ネタニヤフ首相は合意への参加を拒否し、レバノンでの軍事行動継続の権利を主張している。また、ヒズボラを含むレバノン戦線や、中東全体の緊張緩和も合意の範囲に含まれる見通しだが、現地の軍事衝突は依然として激化している。和平合意の接近は、世界的な原油価格の下落や株式市場の反落をもたらしたが、米国ではイラン戦争起因で5月の消費者物価指数が3年ぶりの高水準である4.2%に上昇するなど、経済的負担が政治課題となっている。トランプ政権は国内の支持率回復と戦争終結の両立を急ぐ一方、イラン側は核資産の保全と海峡支配権の維持を譲らず、合意の長期維持には両者の信頼構築が不可欠である。